第4話
<Jailbreak>
ジェイル・ブレイク
「あんな宇宙船で逃げ切れると思っているのか?」
カレド襲撃の一報を受けて応援部隊が到着した。同時にスペースドックから出向する小さな宇宙船を目撃した。宇宙空間での戦闘用に開発された大型の人型戦闘兵器『バング』に搭乗しているクセフはつぶやいた。
「新人!聞こえるか。これよりターゲットを捕獲する」
通信スピーカーから隊長の声が聞こえる。了解の返答をした後、『バング』の安全装置を解除して戦闘モードに切り替えた。機械の両手に搭載された宇宙用マシンガンに実弾が装填された。ゴーグルに表示されている照準を宇宙船に合わせる。ふと、宇宙船にフロントガラスがあることに気が付いた。クラシカルな自動車のような姿に幾ばくかの不安を感じた。宇宙船の下にある丸い物は何だろうか。おかしい、なぜあの宇宙船はこの空間を移動しているのか。まるで自転車があぜ道を走っているかのよう。そう、あの宇宙船はまるで高速道路を走っているレーシングカーのようだった。
「レンジ・エリアを確認!指示があったら狙撃を!」
スピーカーから各メンバーへ指示が出た。自分はまだ新人なので後方からの狙撃となる。実際にはターゲットにスコープを合わせるだけで、実弾は撃たない。いや、この戦闘兵器『バング』であの単なる『くるま』にしか見えない小さな宇宙船を破壊する必要があるのだろうか。そんなお気楽な考えすらしてしまう。これは毎日の事務作業のようなルーティンワークと感じてしまう。ここは平和な地球空域で数十年間戦闘などは行われていない。
だが、数秒後にその考えは覆った。
「1号機大破!3号機と4号機は半壊、戦闘不能」
「おい、2号機と6号機はどこへ行った?」
「何が起こっている…」
3分後に通信スピーカーから聞こえる会話は途絶えた。クセフの目の前には一台のくるまとその上に乗っている青い甲冑の騎士が見える。震える手でトリガーを握る。口の中環渇き、奥歯がガタガタと震える。絶望と恐怖に混ざった感情がこころを満たす。騎士と目があった気がした。ノイズとともに女性の声が聞こえてきた。
「これ以上の戦闘は無意味だ。投降しなさい」
これが自分がはじめて聴いたリア・サーキュレイの声だった。
つづく
カウンター・エイドリアス <彼方なる故郷> 詠称あんね @anne-hardt
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