第4話 初めての食事

《『蠱毒』の能力『自己再生』により体力が満タンまで回復しました》


 ふう……何とか体力が元に戻った。

 スライムに襲われて、失っていた体力がしっかりと回復していた。流石は蠱毒のスキル……名前は物騒だけど、俺には必要不可欠なスキルだぜ。

 スライムを倒してからはまた俺は道を這いずっている。砂利が身体に引っ付いてむず痒いような気がするが雑草を掻き分けて進むよりまだ良い。

 歩きながら少し考えていたことがある。それはスライムが同種族であったとしても攻撃をして来たという事だ。

 本来なら仲良くしてくれそうだったのだが、攻撃してきたと言う事はこの先、俺と同じバブルスライムが出てきたとしても攻撃をされるかもしれないと言う事だ。

 人間でいうならば、人間が人間へいじめをするように魔物の間でもいじめのように攻撃的な同種族がいるかもしれない。

 そう考えると、魔物社会は強い者だけがこの世界を生きるという適者生存の世界……俺はそんな辛く苦しい世界へ足を踏み入れてしまったのかも。

 しかし、そう思う傍らでもう1つの可能性がある。それは友好的な異種族・同種族がいるかもしれないと言う事だ。

 この社会の10割が攻撃的な魔物ばかりではないかもしれない。もしかしたら3割、いや1割の可能性だったとしても俺の事を仲間だと思ってくれる者はいるに違いない。

 何故そう言い切れるか、それは俺が生前人間だった時、俺の事を攻撃する人間だけではなく味方してくれた人間も居たからだ。

 だから、こんな俺でも一緒に助け合ってくれるような者たちが居ることに希望を持つしかない。


(それにしても身体が液体化しているからかなり動きが遅いな……どこかに早く動けるような何かが居れば良いんだけど)


 そう歩いている時だった。横の草陰から何かが俺の方へと飛び出してくる。そして、何かがぶつかった。


《HPが減少しました》

 HP:22→19


(痛ぇ!? 今度は誰だ!?)


 俺は何かが飛んできた方を向くが、そこには誰もいない。周囲を見渡すが俺にぶつかって来た物などなかった。


(あれ? おかしいな?)


 呆気に取られていると、今度は別の方向から何かが飛んでくる。そして、またしても何かが俺にぶつかった。


《HPが減少しました》

 HP:19→16


(だから痛えって!! なんだ!? 一体どこから!?)


 そうして視界を上に向けた時、その正体が分かった。

 現れたのは大きなムササビの様な獣だ。鋭い目つきで俺を睨みつけ威嚇しているようだった。


(お前か!! さっきからちくちく攻撃してくる奴は!!)


 俺は身体を揺らして、勢いよく猛毒溶解液を飛ばした。しかし、軽々と回避されてしまい粘液が木にべちゃりと染み付く。

 そして、ムササビの様な魔物はそのままカウンターをするが如く俺に向かって滑空し、鋭い爪で切りかかってくる。


《HPが減少しました》

 HP:16→13


(痛いって!! くそっ! あっちの動きの方が早すぎて攻撃が当たらないぞ!! どうすればいい……)


 俺を攻撃した後、向かいの木の枝に着地して羽を休ませている。こちらの投擲攻撃が効かないのなら他に攻撃手段と言えば……


(あ! そうか!)


 良い事を思いついたぞ。投擲攻撃じゃない別の手段が俺にはあるじゃないか!!

 そう思いながら俺は身体を揺らし、魔物に向かって挑発した。

 その行動に魔物は怒りを露わにして、俺に再び爪を立てて襲い掛かって来た。


(よし! 今だ!!)


 俺は相手の攻撃と同時に大きく跳ね上がり、攻撃をしてくる魔物に合わせて身体に纏わりついた。

 そして、体中に毒を蓄積させて俺の身体の中で魔物にダメージを与える。毒によってどんどん魔物の身体は溶かされ、ピクリとも動かなくなってしまった。


(よし!! 成功だ!!)


 そう言えば、倒してしまうと消えてしまうんだった。消えてしまうん前に俺の大食漢のスキルを試してみよう。


(いただきます!)


 すると魔物の死体が身体に取り込まれていく。そして、天の声が反応した。


《『大食漢』の能力によって生物の取り込みに成功しました》


《解析鑑定が成功しました。結果を以下に記載します》


 NAME:ジャングラー・モモンガ

 種族:モモンガ

 level:5

 HP:63

 MP:0

 称号:なし

 魔法:なし

 スキル:モモンガ固有スキル『滑空』『高速移動』『鉤爪』

 耐性:なし


《『大食漢』の能力によってジャングラー・モモンガのスキルを取得中……》


《成功しました。以下のスキルを取得しました》


『滑空』『高速移動』『鉤爪』



 お! まじで!! 早速スキルを奪えたぞ!! この『高速移動』ってスキル、使えるかもしれない。


(よし! 行くぞ! 『高速移動』!!)


 俺がそう念じて動き出すと先ほどまでは考えられない速度で道を移動することが出来た。何と言うか身体が追いつかん!! 早すぎ!! 

 でも、これで俺の欠点だった移動速度の遅さが解消された。これさえあれば今後の魔物との戦いの時や逃げる時にも使える。

 それに空も飛べるようになったからラッキー! よしよし、この調子でこの森林から抜け出すぞ! おーー!


 俺は森林から抜け出すべく、猛ダッシュで走り始めた。



《バブルスライムのlevelが上がりました》

 level:2→5

 最大HP+10、MP+7増加

 コモンスキル『分裂』を獲得しました。





 NAME:古川 敬

 種族:液状妖魔族バブルスライム

 level:5

 HP:32

 MP:19

 称号:なし

 魔法:なし

 スキル:バブルスライム固有スキル『溶解液』

    ユニークスキル『無限収納』『大食漢』

    エクストラスキル『蠱毒』

    コモンスキル『体当たり』『滑空』『高速移動』『鉤爪』『分裂』

 耐性:毒無効

   電流耐性

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