第3話 外の世界、そして戦闘

 身体を這いずりながら洞穴の出口を目指していた。

 俺が進んでいる先に輝かしい光が差されていたので多分出口だろうと思い、真っすぐな道を進んでいく。

 そして、ようやく光が強くなったところへ出た。見上げると青い空が広がっており、白い雲が巨大な綿飴のようにできている。

 風が俺の身体を撫で、太陽の光が気持ちよい。それは本当に洞穴の出口だったようで、俺の眼前に広がっていたのは広大な緑の森林だったのだ。


(うわ、すげぇ。こんな広大な森が広がっているなんて何だかわくわくしてきたぞ!)


 俺は身体を這いずらせて先へと進む。周囲は木々が生い茂り、俺よりも高く育った雑草に身体が隠れてしまうほどだった。


(うーーん、歩きずらい。)


 歩くたびに雑草が身体に引っかかり、歩行が上手くいかない。どうしたものか……


(あ! そうだ!)


 俺は『蠱毒』のスキルを使い、体内に毒を蓄積する。そして、身体から少しずつ溶解液を地面に垂れ流した。

 すると俺の身体よりも高く生えた雑草が腐食し、枯れて道ができるようになった。


(やった! 上手くいったぜ!!)


 俺は雑草を溶かしながら道無き道をずんずん進んでいった。進み始めてから大体1時間ぐらい経った頃、俺の身体がバブルスライムの身体に慣れてきたような気がする。

 前よりもかなり這いずる動きがスムーズになり、速度が増した。何だか慣れてくると動きが面白く感じてくる。

 周囲を見渡しても相も変わらず大きな樹木に囲まれているばかりで生物がいるような気配はない。何だか、魔物だけど独りぼっちって言うのも寂しいな。もし意思疎通ができるような相手が近くに居ればいいんだけど……

 そう思いながら森林を彷徨って更に時間が経過した。雑草を溶かして歩いていると突然、雑草が無い場所に出た。

 どうやら森林内で整備された道に出てきたようだ。


(この道を進んでいけば誰かに合えるかも?)


 俺は溶解液を出すのを止めて、普通に歩き始めた。

 このまま歩いている途中に何かに遭遇すれば良いと思ったその時だった。

 道の横の草むらからもぞもぞと蠢く何かを見つけた。


(お! 到頭、俺以外の魔物と初対面か!!)


 そうワクワクしながら、その蠢く草むらに目をやる。そして、雑草を飛び越えるように丸い影が3体が空中を舞った。

 着地したとき、ぽよんっと言う擬音が似合いそうな着地をする青い球体、弾力のありそうなその身体を振るわせているそれは皆が良くイメージする普通のスライムが目の前に現れたのである。


(こいつは……スライムか!! てことは意思疎通ができる!?)


 俺はゆっくりとスライムに近寄ると身体を揺らして、意思疎通を図った。


(や、やぁ!! 俺はバブルスライムですーー仲良くしましょうよーー)


 俺は声が出せないので身体で悪意が無い事を表現してみる。スライムたちは俺を見て、プルプルと揺れている。


(プル……)


(プルプルプル)


(プルプル)


 これって俺の意思って届いてる? 凄い、何か3人? 3体がお互いを見合わせて何か話し合いをしているような気がする。

 少し時間が経った後、スライムたちが俺の方を向いた。どうやら話が付いたようだ。俺の事を仲間だと認識してくれたのかな?

 そう考えていると次の瞬間、スライムの1体が俺に向けて体当たりを仕掛けてきた。俺の身体にスライムの体当たりが命中し、俺は身体が吹き飛ばされる。


(痛ぇ!? な、何だいきなり!?)


 俺は顔を上げると3体のスライムからさっきだったオーラが出ているのが見えた。どうやら俺を敵だと見なしたらしい。

 マジかよ……同種族じゃないのかよ俺達! 仲良くしようよ!!

 しかし、俺の思いとは裏腹にスライムたちは俺に向かって更に体当たりを仕掛けてくる。

 スライム3体が寄って集って、バブルスライム1体に攻撃をしてくる状況に俺は困惑しつつも、このままでは非常にまずい。


(痛い! 凄く痛い! ちょ、ちょっとやめろって!!)


 俺が攻撃を受けているとステータスが俺の横側に起動する。


《HPが減少しております》

 HP:20→17→14


 攻撃してきてもそこは最弱のスライム、痛くても1匹あたり1ダメージだが、複数体いると話は別だ。ごりごりHPが削れてしまっている。

 このHP……もして削り切られると……


《HPが0になった場合、その場で生命活動が終了して死に至ります》


 ですよね!! それは知ってた!! やばいやばいやばい!! このままだと死ぬ!!


《HPが減少しております》

 HP:14→11→8


 うわぁああああああああああああああああ!!!! 死にたくない死にたくない死にたくな――い!!!!


 そう思った時、身体に毒が溜まり始め、自然と溶解液が周りに散布した。

 溶解液に触れたスライムは攻撃するのを止めると、一気に身体が溶け始める。青かった身体は紫色になり、ドロドロとジェル状に溶けて力尽きた。

 どうやら、俺は身の危険を察知して自然と『猛毒溶解液』を無意識に発動したのだろう。


(はぁ……はぁ……もしかして倒したのか?)


 スライムはピクリと動かなると、その場で霧がかかるように死骸が消えてなくなった。


(もしかして、死んだら消えてしまうのか。何て恐ろしい世界なんだ)


 スライムを3体倒したことによってステータスが反応を示した。


《バブルスライムのlevelが上がりました》

 level:1→2

 最大HP+2、MP+2増加

 コモンスキル『体当たり』を獲得しました。



 おお!! レベルが上がった!! レベルが上がるとスキルも獲得できるのか……『体当たり』、まぁ微妙だな。

 でも、初めて敵を倒すことが出来たぞ!! 正直同種族と戦うことになったのは想定外だったけど、生きていく為にはしょうがない。

 この成功体験を次に生かして、どんどんレベルを上げるぞ!!


 こうして俺は初めての敵スライムを倒すことが出来た。ここからどんどん進んでいくぞ!!




 NAME:古川 敬

 種族:液状妖魔族バブルスライム

 level:2

 HP:22

 MP:12

 称号:なし

 魔法:なし

 スキル:バブルスライム固有スキル『溶解液』

    ユニークスキル『無限収納』『大食漢』

    エクストラスキル『蠱毒』

    コモンスキル『体当たり』

 耐性:毒無効

   電流耐性

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