第15.5話 引きこもりとチャットツール

「私たち、連絡手段がありませんよね?」


 ベッドに寝転がっていると、依里が唐突にそんなことを言い出した。

 確かに、お互いスマホこそ持っているが、SNSはおろか電話番号すら知らない。中学校で依里と離れ離れになったとき、交換しておくべきだったと何度も後悔した。


「でも、同じ部屋に住んでるんだったら要らなくない?」


 ――という、僕の横着した考えが牙を向いたためだ。もちろん、同じ後悔をするつもりはない。「なんて、冗談」――と言おうとしたとき。


「要りますよ!!」


 勢いよく依里が主張をする。ここまで強い主張は珍しい。


「連絡手段がなかったら、買い物に行ってるときとかにお菓子とか買ってきてもらえないじゃないですか!」


 何かと思えば、お菓子の催促だった。ついてっきり依里も同じ気持ちだったと思っちゃったぜ。


「お菓子が欲しけりゃ依里も来いよ」

「クレジットカード渡すので……お願いします……」


 差し出されたのは、黒色のクレジットカード。俗にいうブラックカードだった。よく審査が通ったものだ。


「じゃあ、連絡交換しようか――」


 そういって、互いのSNSを見比べる。

 お互いに、友達の数は――4。

 家族しか登録されていなかった。


「あまりにも、友達少なすぎません……?」

「お前に言われたくはない」


 友達登録はした。


 だが――開くたびに、少しだけこの時の嫌な気持ちを思い出してしまうので、まだチャットは始めていない。

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