SHUFFLE HOUSE

神凪紗南

プロローグ①

 「今回もダメだったか」

4月の半ばを過ぎ、とっくに桜の花は、青い葉っぱへと変えている。

スーツのジャケットを着ていると、汗ばむので脱いでいるが、長袖のワイシャツでも暑いので、袖をまくっている。

そんな雲一つない太陽が眩しい晴天とは相反してとぼとぼ落ち込んで歩いている青年、俺こと河西静句かさいしずくがいた。

その答えは、力なくぶらぶら揺れている手が持っているスマホの中にあった。

先月、大学を卒業したばかりで、まだ誕生日を迎えていないから22歳。

それにも関わらず、まだ定職についていない。

そんな俺は就職活動真っ只中の就職浪人である。

そんなときに、落ち込む原因などたった一つ。

俗に言う、お祈りメールである。

「せ、世間一般の就職活動はまだ始まったばかりだからな」

何とか気持ちを立て直そうとする。

しかし、去年も同じように始まったばかりだと油断していた。

一次面接で、何度も落ちっぱなし。

大学のセミナーで対策を練り、ようやく一次面接を突破した頃には、同期たちは最終面接へと進んでいた。

しかし、二次三次の中間面接では伸び悩み、全く成果が出なかった。

秋頃に入って、焦ってはいたものの、就職活動に専念していて、論文を進めていなかったため、一度そちらに路線を変更。

何とか提出は間に合い、卒業できることは確定したが、そのころにはどこの企業も内定が決まっていた。

せっかく頑張って論文を間に合わせたし、学費もこれ以上払えそうになかったので、就職留年ではなく、就職浪人の道を選ぶことにした。

田舎から上京したので、親からは地元でゆっくり探したらどうかとも言われたが、せっかく都会の大学出たのだから、いいところに就職して、大学の学費を払ってくれた両親に恩返しがしたい。

そう思って、こっちで就職活動を続けている。

「まあ、実際は就職できていないと意味がないんだけどな」

上京してきたときに安いアパートを借りて、学費以外の家賃などの生活費はアルバイトで賄ってきた。

今でもそのアルバイトは続けている。

そこで社員として雇ってくれないかなと、淡い期待も抱いていたが、こじんまりとしたところなので、そんな余裕はないようだった。

実家暮らしできたら、どれだけラクだろうと考えることもあるが、初志貫徹。

未だに仕送りなんてできないけど、大企業に勤めて、親に楽をさせてあげたい。

最終面接にも進んだことのない自分ではあるが。

「よし、ネバーギブアップ!」

先ほど中間面接が終わり、その連絡は数日後。

帰り際にお祈りメールを見て落ち込んでいたものの、今日の面接には手応えがあって、初めて最終面接に進めるかもしれない。

この後は、仮眠を取ってから、夜勤のバイトが入っている。

まだお昼を済ませてなかったが、近くのコンビニで買った。

俺は家への帰り道を歩んでいくのだった。

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