第61話 社畜と久しぶりのステータスアップ

「ふう、食った食った」



 夕食後は、暇を持て余したリンデさんやらしばらくしてから飲みにやって来た集落の人たちと二時間ほど雑談してから部屋に戻った。



 彼女は宿の住み込みでなく近くの離れで暮らしているようだ。


 なので今、宿には俺とクロしかいない。


 不用心と思われるが、売上金などはリンデさんの自宅に持って行ってしまうし、集落の人はみな顔見知りだし、そもそも持ち出しやすい金目のものは置いてないので安全なのだそうだ。



 ……ちなみに雑談の中で出てきた話では、数か月前に冒険者崩れの盗賊団が集落を襲ったことがあったそうだ。


 しかし宿の女将は元冒険者でフィーダさん仕込みの戦闘力を持つリンデさん。


 盗賊団をサクッと魔法で鎮圧し、さらに集落の皆さん総出でボコボコにしたとのことだった。


 なお盗賊団がその後どうなったのかは誰も語らないあたり、さすがの異世界クオリティだったが。



 ちなみにその話に続いて、リンダさんから「キッチン周りには夜中の間は防犯に関する魔法が掛けているから触らないでね」と釘を刺された。


 触ったらどうなるかは聞いていない。



 『鑑定』と『模倣』は……あえてやめておいた。


 『模倣』はどうか分からないが、『鑑定』は明らかに対象に何らかの干渉をして情報を取得している。


 なので、もし防犯魔法の効果の中に『行使した魔法を逆探知する』ものあった場合、要らぬ疑いを掛けられてしまうことになる。


 さすがにそれは本意ではない。



 ちなみに旅人の俺は、集落の住民たち(皆じいさんばあさんだったが)にさんざん弄られたのは言うまでもない。


 皆さまが勝手に持ち込んでいたお酒やつまみはなかなかの美味だった。



 ていうかここ、こぎれいなだけで完全に場末のスナックか居酒屋じゃん……



 されはさておき。



 すでに湯浴みも終わり、就寝の準備は整っている。


 クロはさっさとベッドの上で丸くなっており「はやくねるぞ」ばかりこちらをじっと見ているが、俺にはまだやることがあった。



 そう、しばらく放置していたレベル上げだ。



 明日はキノコ採取と一緒にダンジョン探索も行う予定だ。


 しっかりとレベルを上げて臨もうと思う。



「さて、どうするかな」



 ステータスを表示させる。



 《廣井アラタ 魔眼レベル:10》


 《体力:350/350》


 《魔力:570/570》


 《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル5』『鑑定:レベル6』『身体能力強化:レベル3』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』『魔眼色解除』『魔眼光:レベル3』『威圧:レベル1』『模倣:レベル1』『隠密 レベル3』『バッシュ』『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』『乱戦の心得(基礎)』『剣術の心得(基礎)』『剣術の心得(初級)』『槍術の心得(基礎)』『死の連鎖』『忌避魔法(コカトリス)』》


 《従魔:魔狼クロ → スキルセット(1)『弱点看破』》


 《現存マナ総量……521,500マナ》



 マナ総量は現実世界で魔物やら魔族やらを倒したおかげで相当貯まっている。


 その後に取得できるスキルが延々と続いているが、とりあえず後回し。



 レベル上げの優先順位としては、まず魔眼そのもののレベル、そして『鑑定』『身体能力強化』『模倣』のレベル上げだろうか。


 スキルによってはレベルが上がらないものも多いが、『魔眼』のレベルを上げたらさらに高度なスキルを覚えることができるようになるにではないかと思われる。



「とりあえず、こんな感じかな」



 で、レベル上げが終わった状態がこうだ。



 《廣井アラタ 魔眼レベル:15》


 《体力:600/600》


 《魔力:1080/1080》


 《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル5』『鑑定:レベル6→8』『身体能力強化:レベル3→5』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』『魔眼色解除』『魔眼光:レベル3』『威圧:レベル1』『模倣:レベル1→3』『隠密 レベル3』『マッピング レベル1→3』『バッシュ』『ロイク・ソプ魔導言語(基礎)』『乱戦の心得(基礎)』『剣術の心得(基礎)』『剣術の心得(初級)』『槍術の心得(基礎)』『死の連鎖』『忌避魔法(コカトリス)』》


 《従魔:魔狼クロ → スキルセット(1)『弱点看破』》


 《現存マナ総量……10,500マナ》



 それと、魔眼のレベルを上げたことにより新規スキル『マッピング』が取得可能になったので、即ゲット。


 レベルもできるだけ上げておいた。


 ちなみに『マッピング レベル3』は『鑑定』で確認したところ、



《屋内屋外を問わず自動的に周囲の地形情報などを記録することができるが、障害物を透過して探査することはできない》


《探査範囲は半径15m。解像度は10㎤》


《記録対象:地形、罠、隠し扉、生命反応、確認済の敵味方の識別》



 と出た。


 現時点でもすでに恐ろしく強力なスキルだが、レベルを上げたらさらに性能が上がるようだ。


 つーかこれ、使いようによっては相当なチートスキルになるのでは……


 さすがは『魔眼』レベルの向上で出てくるスキルだな。



 いずれにせよ、これで未知のダンジョンに挑んでも多少は安心できる。



「……よし、寝るか」



 やることが終わったので、ベッドにもぐりこむ。


 それに合わせてウトウトしていたクロがふと起き上がると、スルリと毛布の内側に潜り込んできた。



 ……ちょっと暑いなと思っていたが、クロを抱きかかえていたら気づけば朝になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る