第15話 社畜とドロップアイテム
「これは……短剣か」
全長はおおよそ40センチくらい。
全体的に武骨なフォルムで、いかにも実用品、といった風情である。
とはいえ、個人的には派手な装飾が施されているよりもこういう使い込まれた感じの方がグッとくるんだよな。
男のロマン、というか。
鞘から抜いてみると、刃は鉈のように分厚い造りになっていた。
刃渡りはだいたい25センチくらいだろうか。
「おお……カッコいい!」
ダンジョンらしいアイテムに、がぜんテンションが上がる。
『…………』
クロも興味深々な様子で、俺の手に持った短剣の匂いをフンフンとしきりに嗅いでいた。
そうだ、この短剣のスペックはどうなっているんだろうか?
鑑定で確認してみる。
《種別:短剣 名称:ダガー 付与効果:なし 品質:低》
《ノースレーン王国周辺で生産されている一般的なダガー。街道に出没する盗賊がよく所持している》
解説付きで短剣の名前が出てきた。
ていうかノースレーン王国ってなんぞ。
どう考えても地球上の国じゃないよな。
その後の説明も現代とは思えないし。
となると、このダンジョンは異世界のものなのだろうか?
まあ、左目の魔眼でしか入口が見えない時点で普通じゃないのは分かっているけどさ。
そうなると、このダンジョンの先ががぜん気になってくる。
もしかして、このまま進むと異世界に繋がっていたり……とか?
それを確かめるには、とにかく進んでみるしかない。
俺はミミックのいた部屋を抜け、さらに奥へと歩みを進める。
「とりあえず……本格的な武器が手に入ったのは大きいな」
次からはミミックに捕まっても落ち着いて対処できるし、もっと危険な魔物が出てきたときには戦闘らしい戦闘ができるかもしれない。
もっとも、ドロップした短剣は鉄パイプよりもリーチが短いから、大きな魔物が出てきたらあまり役に立たない気がするけど。
……そういえば。
さっきレベルアップと一緒に取得したスキルの中に気になるものがあったな。
俺は無言でステータスを呼び出す。
《廣井アラタ 魔眼レベル:10》
《体力:345/350》
《魔力:570/570》
《スキル一覧:『ステータス認識』『弱点看破:レベル5』『鑑定:レベル4』『身体能力強化:レベル3』『異言語理解:レベル1』『明晰夢:レベル5』『魔眼色解除』 『魔眼光:レベル3』『威圧:レベル1』『模倣:レベル1』》
《従魔:魔狼クロ → スキルセット(1)『弱点看破』》
《現存マナ総量……5,108マナ》
体力がちょっと減っているのは、ミミックに掴まれたからだろうか。
どのみち無視できるレベルの減少だ。
それと、マナ総量がかなり増えていた。
ダンジョンに入る前まではたしか3,500だったから、スライムとミミック討伐で1,600強、マナが増えた計算になる。
スライムはたしか一体あたり12マナだったはずだから……ミミック、1,500マナくらいあったのか。
つーかミミック、単純計算でスライムの125倍強いってことになるぞ。
もちろんマナの量イコール強さとは限らないけど……それでも、二度目の探索で相手にしてたら絶対に捕食されて死んでただろこれ。
今さらながら身震いしてきた。
今後も気を引き締めて慎重に進むことにしよう……
それはさておき、新スキルだ。
次の部屋に入ったところで、俺はとあるスキルに視線を合わせる。
『魔眼光 レベル3』
これだ。
どうやらステータスが注釈や説明が表示されないハードモード(?)なので、スキルは実際に使ってみるまで効果のほどが分からない。
とはいえ発動方法は自体は頭の中に『インストール』されているから、そこからおおよその発動効果は推測できる。
これ、どうやら目から光線が出るスキルらしい。
しかもチャージができるとのこと。
なんというか、『魔眼』らしいスキルだ。
となれば試すしかない。
この部屋はかなり広く、奥行きは20メートル以上ありそうだ。
俺が足を踏み入れたことにより出現したのは、例によってスライム。
動きも遅いし、ちょうどいい感じの標的だ。
俺は一番近くにいたスライムに視線を合わせた。
それじゃ、いくぞ……!
――キイィィン……
左目に力を込めると何かが収束するような音がして――射出。
――バヂンッ!
爆ぜるような音とともに、目の前のスライムが消滅した。
よく見ればスライムの這っていた石床には穴が穿たれ、そこからシュウゥゥ……と煙が立ち上っている。
「…………なるほど…………これはヤバいわ」
うん、ちょっと引くほどの威力だった。
多分一般的な拳銃とかより強力だよな? この調子だと。
ちなみにこのスキルは魔力消費型のようだ。
見れば、魔力が《520/570》と50ほど減っている。
ノーマル時とチャージ時の消費魔力が分からないが、マックスまでチャージした場合はだいたい11回ほど使える計算か。
ほかの魔物に対する攻撃力にもよるけど、これからどのくらい続くかもわからないダンジョンを探索するうえでは、それほど気軽に使える回数ではないな。
それにチャージ時間が5秒くらい必要だから、使う場面はよく見極める必要がありそうだ。
「とりあえず、先に進むか」
『…………』
ちなみ『威圧』は言葉どおり相手を一瞬怯ませるスキルだった。
これも使いどころを考えつつ使用する必要がありそうだな。
そんな感じでスキルのチェックが終わったので、どんどん進む。
ちなみに他の部屋にいたミミックはマックスチャージの『魔眼光』で弱点をブチ抜けば一撃で倒せた。
ドロップ品は異世界の硬貨が数枚だったりとか小さなペンダントだったので、もしかしたらランダム性があるのかもしれない。
そして……
俺たちはクロと出会った扉のある広間に到着した。
相変わらず適当に取り付けたような扉の他にもう一つ、奥へと続く扉が見えた。
「ここからが未知の領域だな」
『…………!』
心なしか、俺を見上げるクロのテンションも上々のように見える。
それを眺めていると、俺もワクワクした気持ちが胸の奥で燃え上がってくるのを感じた。
「よし、いくぞ」
広間の扉の先はこれまで同様通路が続いていた。
だが、違うこともある。
通路の数メートル先が階段になっていたのだ。
「これ、階層が変わる感じなのかな」
下へと続く階段だ。
となると思い浮かぶのは、ゲームのような『階層構造』。
ここまで来るのに、このような階段は存在しなかった。
しかも一本道の最後に、下り階段だ。
多分だが、そういうことなんだと思う。
となれば、この先は今までより強い敵が出てくるかもしれない。
ごくり、と唾を飲み込む。
「よし……行くぞ」
自分に言い聞かせながら、足を踏み出した。
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