vol.2 2023年11月号

早速サボってしまいました。


初秋の不意に失ふガムの味 加藤綾那


まさにガムを嚙む感覚そのものである。私はロッテのキシリトールガムを愛用しているが、最初は少しミントの味を感じながら噛むが、そんな意識はふとどこかに消え、気付いた時には味が失われている。そこにすっと息を初秋の頃の空気をすっと吸うと、より口の中も軽やかな空気に包まれそうだ。


スリッパの踵の空気秋暑し 高橋真美


スリッパを履いた時の踵が少し沈む感覚をこのように言葉にしたかという驚きがあった。クリニックなどで履きならされてくたびれたスリッパとはまた違う場面で、季語とも相まって不思議と光景が浮かび上がる。


燕去ぬ大型船の腹赤く 三輪小春


中七下五に確かな実景が浮かんでくる。特に下五が「底」や「下」ではなく「腹」ということで船舶の丸みなども見えてくる。昨年は初めて小春さんにお会いでき、貴重な句集「風の往路」もいただけた。俳句のイメージそのもの、とても物腰の柔らかい方であった。


イギリスも秋晴の国絮の国 藤井万里


彼は8月頃に宇イギリスに留学に行ったそうだが、行ったからこそ詠める俳句だろう。見えていいる秋晴の空も絮も日本とは少し異なるかもしれないが、同じように秋を感じたのだ。主宰も一時期ドイツの日本人学校に赴任して、現地で俳句を詠んでいた。きっと知見を広げたことでより魅力的な俳句を作ってくれるに違いない。


くたびれて何はともあれとろろ汁 桑山文子


何もいっていない措辞がとても生きている。とろろ汁という季語が絶妙で、それまでに何をしてどうして疲れたのかという背景が読者ごとにぼんやりと浮かんでくる季語である。文子さんとも年初の藤井寺の句会で初めてお会いすることができた。このような俳句を自然に作ることができる方である、という不思議な確信があった。








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秋草を読む 上川拓真 @bakamikawa

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