秋草を読む
上川拓真
vol.1 2023年10月号
折角なのでこういうこともしていきたいと思う。前月号より毎月5句のピックアップを目安に、ただし書かない月もあるかもしれない。
七月の踵そろへて読む句集 高橋真美
真美さんの俳句は言葉も風景も美しい。窓辺だろうかそれとも夏野だろうか。夏兆す頃の健康的な踵とその先の夏のあおあおとした光景まで見えてくる。この句集とは『礫』のことだろうか。時期的には案外間違っていなさそうだ。
電球に集まつてきて踊るなり 舘野まひろ
拙句で恐縮だが私も以前週刊俳句(2017/4/23)で「夜の蒲公英が電灯に集まりぬ」という句を発表した。夜の光はそのように見せる不思議な力があるのだろう。そしてこの句には何よりも動きがある。それが良い。そして「なり」という断定が非常に効いている。ひとつの電球に人々が吸い寄せられて、自然と身体が踊ってしまう感覚なのだろう。
冷房や作り滝ありピアノあり 木村定生
一度は見たことがある景色をこんな平易な言葉で俳句になってしまうのかという感動がある。人工物を並べただけにも関わらず、外の暑さや、外に見える景色の夏めく様子まで見えてくる。
開けるたび外れたがつてゐる網戸 橋本小たか
立て付けが悪い網戸の様子を「外れたがつてゐる」と表現した中七がとても秀逸。これまではそのような状況すると少しイライラしたり、古びてしまったという哀愁を覚えることが多かったが、小たかさんはそこに意思があるかと感じたのだ。見習わなければならない感性だ。
枝豆に弾かるる塩濡れる塩 加藤綾那
飲んでいる時間も吟行なんだと気付かされる。リフレインによるリズムの軽さがとても良い。この鑑賞文もビールと枝豆をセットに執筆しているが、目の前の冷凍の枝豆より、こちらの俳句の枝豆の方が断然美味そうだ。
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