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   第三章


 レッドブルリンク、第八ターン。スリップストリームに入って十分にパワーを温存してから果敢にインを突いたアイスマンであったが、もう一台のフェラーリは決して先を譲ることはなかった。キミ・ライコネンの猛追を振り切りオーストリアGPで堂々と今宵のF1カジノ十勝目を飾ったのは、真紅のシングルシーターを操るセバスチャン・ベッテル、すなわち昨晩とは違いまだソフトドリックしか口にしていないマジックであった。

「おめでとう。クラブソーダ飲む?」

「うん」

 ユリカはグラスを差し出した。

「やったね」

 マジックはそれを一口すすった。

「ああ」

「結構、勝ったね。何勝目?」

「えーっと……」

 隣のコックピットのツチオカが答えた。

「十勝目だよ」

 それを聞いて、マジックは笑みを浮かべた。

「そうだな」

 ツチオカはコックピットを離れ、バーカウンターへ向かう。マジックはそれを眼で追った。彼はマイクを持った男の隣の席へつく。店内に音楽が流れると、その男が歌い始める。ツチオカはクラブソーダを注文し、携帯電話を取り出した。


 Getting what I want, boy 

Why does that make you so mad?


その曲はデイビッド・ゲッタの《バッド》だった。マジックはその曲を知らなかったし、歌っている男も知らないはずだったが、どこかで見たような気がした。だが、昨日ここで見ていないことは確かだった。こんな曲を完璧に歌う奴がいたらきっと覚えていたことだろう。例えどれほどダイキリを飲み過ぎていたとしてもだ。それに昨日のレースでマジックが一勝も出来なかった一因がもちろんそこにあったのも確かだった。最後のレースに負けた後、見かねたタケザキがこんな言葉をかけたかもしれない――

「マジック、もうその辺にしとけよ」

「あ、ああ」

「仕方ないよ。結構飲んだ後だしな」

「そうだな」

 それに、負けたと言っても自分のカネじゃないしな。酒もメシもクロカワという名のどこかの犯罪組織に所属し若頭とかいう役職を担う男の奢りだ。とりあえず多少はカネを貯めてる程度のこと以外奴の正体に関して定かなことはない。信用出来るのか。確かにそれは問題であろうが、差し迫ったもう一つの問題は今夜の寝床とそれ以降どこに住むかだ。頼めばホテルかなんか用意はしてくれるんだろうがどうせならさっき赤い86に乗せてくれたこのユリカの部屋に転がり込めないものだろうか。一体、どうしたら転がり込めるのだろう。彼は試した。

「あのさ」

「うん」

「ちょっとお願いがあるんだけど」

「何?」

「実はちょっと事情があって、俺、住む所がなくてさ」

「うん」

「だから、今夜キミのとこに泊めて貰えないものかと」

 ユリカは明らさまに困惑の表情を浮かべた。

「ダメかな」

「……」

「まあ、ダメならダメで何とでもなるから。全然大丈夫」

「……いいよ」

「え、あ、ありがと」

「あのさ」

「うん」

「住むとこないって、今までどうしてたの?」

「実は刑務所に入ってたんだ」

 そして彼女の困惑の目は突如としてきらめいた。

「何やったの? ひょっとして殺し?」

「いやいや、それだったらそんな簡単に出てこれないでしょ。よく分かんないけど。白髪とかになっちゃうでしょ普通」

「だったら何? ねえ何々?」

「いやだからそういうことはこういうとこじゃちょっと無理でしょ」

「じゃ、後で教えてくれる」

「まあ、それだったら」

「ありがと」


 ユリカの手がギアを二速に入れると足はアクセルを適度に踏み込んだ。二速で引っぱってから四速にいれ更に引っぱった後、六速に入れるとアクセルを緩め、呻るエンジンを大人しくさせた。やはり207馬力程度ではパワー不足だな。ただ買うとしたらBMW M2とアウディTTRS。一体どちらがいいだろう。M2はマニュアルがあるが車高が高過ぎる。TTRSはオートマしかないが車高が低くスタイリングで優る上、相当バットモービルっぽい。助手席の同乗者がその程度のことしか考えていなかった最中、運転手は同乗者の犯罪歴について根拠の無い憶測を飛び交わせていた。やっぱ殺し屋ではなかったのね。相当悪そうだけどそこまでは悪くなかったってことか。いやでも分からないわ。ああ見えて実際は四十歳くらいかもしれないし。二十歳で誰かやって二十年経って仮釈放されたのかもしれないわ。ところで一体いくつなんだろう。そうだ、訊いてみよう。ふーん、三十二。まあ、そんなところね。ところでそう言えば、さっき泊めてあげる代わりに何やってブチ込まれたか教えてくれるって話だったわね。じゃ、早速訊いてみようかしら。

「ねえ」

「うん」

「さっき約束したよね」

「ああ」

「じゃ、教えてよ。何やってブチ込まれたの?」

「銀行強盗」

 ユリカは相手の表情を窺った。

「またー」

「……」

「ほんと?」

 同乗者は満更でもない表情で頷いた。

「へえ」

「あ、そうだ」

「何?」

「ちょっと、二十四時間営業のスーパーへ寄ってもらえないか」

「いいけど、何買うの?」

「生活に必要な物だ」

 赤いクーペは四速で登り勾配を進み丘の上へ立地したスーパーマーケットへと向かった。駐車場への小道を下り停車させると二人は86を降りた。籠を取ったマジックはそれに生活に必要な物を入れた。下着、歯ブラシ、歯磨き粉、シェイバー、シェイビング・クリーム、化粧水、シャンプー、リンス、ティッシュペーパー。入れ終わるとそれらの会計をセルフレジで行なった。行なう前にユリカはマジックにセルフレジに関する貴重な助言を授けたという。

「セルフレジの商品の重さを量る秤はその精度が低い場合もあるから最も軽い物から載せるといいわよ」

 マジックは最初に歯ブラシを手に取った。

 五時間前にマンションの五階にあるユリカの部屋に入ったマジックは午前十時にそこで目を覚ました。何らかの強大な敵と熾烈な激闘を繰り広げる夢を見ていたが具体的な内容はすっかり忘れた。その戦いで汗をかいたマジックは辺りを見回した。一体、ここはどこだ。ソファで横になっていた彼は体を起こししばらく考えると昨日のことを大体思い出した。コンビニ。マティーニ。F1。セルフレジ。歯ブラシ。そうだ、起きたからには歯を磨こう。彼はそう思った。あ、おはよう。うん、おはよう。昨日はどうもありがとう。あ、いいよ別に。あ、そうだ。何。あのさ、後でパソコン貸してくんない。パソコン? いいけど、その前にシャワー浴びたら。ああ。何すんのパソコンで。いや、別にちょっと、ハッキングとか。え? いや、ハッキング。ハッキング? ま、何かよく分かんないけどパソコンを貸すには一つ条件があるわよ。マジックは歯ブラシを持つ手を止めた。何だよ、その条件って?

「〈アゲーラ・チャレンジ〉に挑戦してもらうわ」

「あ、あの〈アゲーラ・チャレンジ〉にか?」

 あたかもそれが何か知っているかのような返事をしたマジックだったが実際は何も知らなかったので彼がシャワーを浴びた後ユリカはそれを説明したという。それは後にかつて一世を風靡したかのように語り継がれるであろう携帯ゲーム機用ソフト《ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド》を約一年以上ほぼ毎日やり込んだユリカがゲーム内に設定された達成目標イベントとは別に独自に編み出した各マシン対抗総合戦闘力測定ランキングと言っていいような物である。各マシンが対抗しているとは言え、実際やっているのはユリカ一人だったので彼女本人の好みが如実にタイムに反映された。一番速いのは4WDでハイパワーなマシンなはずだった。だから当初はガヤルドが4分37秒29で一位だったが、4WDで安定感があって簡単に速いマシンで勝つよりも、安定感で劣りすぐスピンするFRで勝つ方が自身のスキルが向上するという観点からFRハイパワーマシンで走り込んだ結果、現在はFR勢がワンツー・フィニッシュを決め二位がZR1そして一位はバイパーの4分21秒62となっていた。

「勝利条件は?」マジックは質問した。

「そうね、各マシンどれかのベストタイム更新。4WD系はあまり走り込んでないからそっちでやった方が有利よ」

「それはどうもご親切に」

 SL65AMGが4分41秒89で八位か。コルベットとバイバーが上位を占めていることから類推してユリカはデザイン的にベンツは好みではなくあまり走り込んでいないはず。マジックはそのワイドボディ化されたV12エンジンの2シーター・リトラクタブル・ハードトップを選択ししばらく適当にストリートを流した。ここはどこだ? サン・ディエゴとかではないだろう。シアトルかもしれん。ゲーム内ではガソリン・スタンドっぽい場所を通過すると色を変更出来るシステムになっていた。やっぱこれは黒だな。フロントグリルとメルセデスのエンブレムがマットブラック塗装にカスタマイズされていたこともあって相当バット・モービルっぽい感じになっていた。しばらくベン・アフレック版バットマン気分を満喫しながらマシンの動力性能を確認してからそのどこだか分からない海沿いの架空都市において通称MOST WANTED1として恐れられていた伝説のストリートレーサーが操るケイニグセグ・アゲーラRとのバトルは勃発した。レースは黄昏時の山間部でインターステートを疾走するアゲーラを追撃する形で始まった。インターステートは間もなく市街地へと下るスカイウェイへと姿を変貌させ遠景に高層ビル群を望む絶景を眺めつつ夕日の逆光を浴びる中メルセデスは一般車両の隙間を巧みにすり抜け全開走行し時速300キロほどで郊外地域へと降り立った。既にマジックはアゲーラを抜き去りインターステートを降り工業地帯と思われる区域をコースの指示に従いつつ豪快にコーナーを攻めながら先へ向かう。インターステートへ再び合流する局面では進入路がかなり狭かったのでクラッシュしないように注意した。インターステートではその架空都市の市警察に所属するコルベットが攻撃を開始した。走行中に瞬時に設置可能な地雷的兵器であるスパイクベルトというものをそいつらは好き放題そこら中にばら撒きレーサーのタイヤをパンクさせ走行不可能にする戦術を実行する。ただパンク防止タイヤを装着していたことでどういう仕組みかは謎だがパンクしてもすぐにまたタイヤは膨らんだので結構大丈夫だった。コルベットの攻撃に多少手こずっていたらアゲーラに抜かれてしまった。ただ先を走るよりは後ろを走ったほうがスリップストリーム効果を得られてタイムアップに貢献するというメリットはあった。問題はタイムでゲーム上の勝敗ではない。ただアゲーラに負ける程度のタイムでは確かに大したタイムではない。結局終盤にインターステートでアゲーラを抜きナイトロを全開使用してフィニッシュした。4分24秒87。車種別ベストを更新し全体ランキングも二位に食い込んだ。

 ユリカがコーヒーを準備している間マジックはメルセデス・ベンツのSLS AMGをちょっと試してみた。若干パワーでSL65には劣るようだがこれは唯一専用色のマットグレーを選べるのでいかがわしいビジネスで一財産をこしらえクルマとキャバクラで散財しその内パクられるようなゴロツキ成金気分を堪能している内にユリカがコーヒーを持ってきてくれた。

「おまちどうさま」

「ありがとう」

「あら、あんた、まだそれやってんの?」

「うん、ちょっとこのSLSのオーバーステア具合が楽しくて」ブラックコーヒーを一口すすって言った。「プロの味だ」

「うん。で、例のハッキングはどうなったの?」

「そうだったな」

 マジックはユリカのヒューレット・パッカードでF1カジノ・マシンの製作企業を検索するとそこのシステムへのハック・インを開始した。


 横で知らない男がデイビッド・ゲッタのEDMを歌っている最中にツチオカが電話で話し込む様子を彼は眺めていた。

「ねえ、何見てるの?」

「ん?」マジックはユリカの方を向いた。

 彼女は彼にキスした。しばらくそれが続きそれが終わった頃ツチオカがF1カジノ・マシンのコックピットへ戻ってくるとマジックに言った。

「さ、やろうか」

「ああ」

 様子がおかしい。走行開始直後それに気づいた。分かりやすく《モスト・ウォンテッド》に例えるならさっきまでポルシェ918スパイダーだったのが突然BMW M3クーペ程度に戦闘能力が低下した具合だ。M3クーペは小洒落た小気味いいデザインでイカしたエンジン音を奏でる最高のスポーツカーではあったが918とでは勝負にならない。どうやらツチオカがマジックの小細工に気付き何らかの対策を講じた結果であろう。予選が終わりベットが実施される段階でマジックは早々に棄権しコックピットから出た。

 さっきの曲はさっぱり知らなかったが今回は世界的にお馴染みのハードロック調ギターサウンドのイントロがスピーカーから流れ出した。ユリカを連れたマジックはご機嫌に《ロッキー3》の主題歌アイ・オブ・ザ・タイガーを歌っている男の隣に座った。今夜はバーテンとして勤務していたタケザキが現れると彼に注文を訊いた。マジックはマティーニをユリカはピニャコラーダをそれぞれ注文した。男が歌い終えた辺りにタケザキは二人にドリンクを渡すとマジックに隣の男を紹介した。

「マジック、こちらはシンガーだ」

「シンガー、よろしく」

「あ、どうも、初めまして」

「俺はマジック。こっちはユリカだ」

 シンガーはユリカと軽く会釈を交わした。

「さっきの曲は知ってるぞ。《ロッキー3》だろ」マジックは言った。

「シルベスター・スタローンが大好きなんです」

「そうなのか」

 ユリカはマジックの隣からシンガーの隣の席へ移動し、彼の前に置かれていたカラオケのリモコンに手を伸ばす。するとそこへ奥の厨房からマヤが現れシンガーに挨拶をした。リモコンを操作していたユリカはシンガーに話し掛ける。

「ねえねえ、これ歌える? エド・シーランの《ゴールウェイ・ガール》」

「いや、これはちょっと知らないなあ」リモコンを見てシンガーは答えた。

「ねえ、じゃああれ歌える?」マヤは彼に言った。「前に言った曲」

「エド・シーランの《シェイプ・オブ・ユー》でしたよね。歌えますよ」

「やったあ」

 シンガーはリモコンを操作し曲を入力し、ジン・トニックを飲んで待っていると何の楽器なのかはさっぱり分からないがとにかくリズミカルな曲が掛かり始め、彼は歌い出した。マジックはマティーニを飲みながらシンガーが何回も「Come on be my baby, come on」を繰り返すのを聴いていた丁度その頃、タケザキが彼に話しかけたのだった。

「マジック。ビリー・シェイカーがお越しになったぞ」

「ん、誰?」

「とにかく裏に来い」

「ああ、これ飲んだらな」

「もちろんだ」

 マジックは残ったカクテルを飲みオリーブを口に放り込むと立ち上り歌っていたシンガーとその隣のユリカの後ろを歩きカウンターから厨房に通じる入口の中へ進んだ。そこでタケザキが彼に話し始めた。

「ビリー・シェイカーはかつて米国国防総省国防兵站局に勤務していたがカネに目が眩みそこで培ったコネを生かせる次の職業、死の商人へと転身した」

「死の商人」

「マフィアやカルテルと言った犯罪組織を相手にした武器商人だ。だがそういった穏やかならない連中と付き合っている内になんらかのトラブルに巻き込まれたらしく米国に居られなくなってこの辺に転がり込んで来たそうだ。ここでも武器取引の商売を始めて今日は先日うちで発注したブツを配達しに来てくれたんだ」

「ブツか。そいつは楽しみだ」

 二人が厨房の隣にある事務室へ入ると奥のテーブルとソファで二人の中年がナッツをつまみながらジャック・ダニエルズをあおりゲラゲラ笑いながら話し込んでいた。その手前には会議用のテーブルとホワイトボードが設置されておりその傍らにビリー・シェイカーの手下と思しき人物が二名休めの姿勢で立っていた。

「おお、来たか」

「よお! タケザキ。久しぶり」

「どうも、お久しぶりです。ったく兄貴も、ミスター・シェイカーにこんな安い酒出しちゃダメじゃないですか」

「え? いや、だって、ビリーがこれでいいって」

「いいよいいよ、これで」ビリー・シェイカーはそれをゴクリとあおりナッツを口に放り込んだ。

「え? いいんですか? そっかあ、折角アイルランド産のスペシャルな奴用意しといたんだけどなあ」

「スペシャル?」

「いいですいいです。それでいいんだったらそれでいいです」

「いやあのこれにも飽きたなあ。なあ」

「ええ」クロカワは応じた。

「折角だからそのスペシャルなアイルランドもいいなあ」

「でしょう。分かりました。ちょっくら持って来ます」

「おお。よろしく」ビリーはマジックを見た。「彼は?」

「彼はマジックです」

「あんたが例のマジックか。よろしく」ビリーは立ち上りマジックと握手するとまた座った。

「お待ちどうさまでしたー」

「随分、早いな」

「さあ、さあ。どうぞ。どうです、お連れの方々にも」

「おお、そうだな。おい、お前らも飲んでいいぞ」

「いいんですか?」

「いいっていいって特別なアイルランドなんだから。折角だから飲んどけって」

「ありがとうございます。では、遠慮無く」

 タケザキはマジックにもグラスを渡した。マジックはその特別なアイルランドを一口すすりその味わいをじっくりと楽しんだ。一方シェイカーはそれを一気にあおった。

「うめー。やっぱこれだな」

「でしょう」

「やっぱ、アイルランドは違うな。どうだ、違うか?」シェイカーは手下どもに問いかけた。

「明らかに違いますね」

「とんでもなく違います」

「ハハハ、ったく適当なことばかり言いやがって。どうしようもねえなお前らは。ではっと」シェイカーはグラスを置くと立ち上がった。「飲みまくったところでそろそろビジネスといこうか、え?」

「ショー・タイム!」タケザキがそう叫んで拍手すると、クロカワや手下どもも共に拍手し、何かよく分かんなかったがマジックも一応その行為に参加したのだった。シェイカーが両手を小刻みに上下させる動作で拍手を制するとすぐさま手下どもはケースやバッグからブツを出しテーブルに並べ始めた。

「まずはお馴染みUSA代表。M4。《ゼロ・ダーク・サーティー》! 気分はネイビー・シールズ。意外とメンテナンス性に難があるって? ふむ、それなら信頼性のジャーマン・メイドならどうだ。G36Cコマンド・アサルト・カービン。かっこいいだろ、このフューチャリスティックなスタイリング。もっとコンパクトなのがいいならサブマシンガンだ。同じくヘッケラー&コッホ社製のMP7。こいつはサブマシンガンながらも抜群の貫通性能を誇る特殊弾薬を使用しているから防弾ベストにも有効だ。マン・ストッピング・パワーを重視するならよりハイパワーな45ACPを使用するUMP45もお勧めだ。次はハンドガン。《デッド・プール》」シェイカーはデザート・イーグルをタケザキに渡した。「こいつはレトロだな。マジック確かあんたの希望だったか。紹介しよう、こちらはスミス&ウェッソンだ」

 マジックは4インチバレル、ステンレスモデルのコンバット・マグナムM66を受け取り満足そうな表情を浮かべた。シェイカーは間を取り、もったいぶったように息をつくとこう切り出した。

「いよいよ、メイン・イベントか……気を付けろ。あまりに無慈悲な武器だから国連は対人使用を禁止している。セミ・オートマティック、対物破壊ライフル。これさえあればロボコップが相手でも勝てるぞ――バーレットM82だ」シェイカーは長いスピーチに喉が渇いたのかスペシャルなアイルランドを一口すすった。「さあ、どれにする?」

 クロカワはいつものように答えた。

「全部だ」

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