第32話 モンスター討伐後

 巨大な岩がドロドロプリンを押し潰してもしばらく二人は警戒をしていたが……


「……大丈夫そうですかね?」


「うん、多分……流石に潰れたみたいなんだよ」


 ドロドロプリンが起き上がってくる様子はない。

 どうやら、完全にぺしゃんこになってしまったようだ。


「はぁ……流石に緊張しましたね。鳥楽音さんは大丈夫ですか?」


「うん、僕の方も、最後はちょっと危なかったけど大丈夫みたい」


 実質一人で時間稼ぎをしていた鳥楽音。

 最後には捕らえられてしまったが、身体に負傷はないようだ。


「ギリギリで間に合ってよかったです」


 雫月の方は、岩を作成することに集中していたので、間に合ったのはギリギリだった。


「流石に、モンスターを生み出してくるのは驚きましたね」


 本来であれば、もっと早く攻撃できたのだが、モンスターを生み出してくるので、それを倒すための岩も作る必要があり、余計に時間がかかってしまった。


「前にもモンスターを生み出してくるモンスターとは戦ったけど、もうコリゴリなんだよ」


「強化合宿の時のカマキリみたいなやつですよね……私も頭によぎりました」


 あの時は、自分の子供を生み出してきただけだったが、今回は、色々なモンスターを生み出してきた。

 モンスター自体が弱かったから良かったものの、色々なモンスターと同時に相手取るのは大変だ。


「まぁ、とりあえず、無事に倒したということで」


 いつまでも岩を眺めていてもしょうがない。


「狐珀さんに報告に行きましょうか」


「うん。そうしようか」


 二人は外で待つ狐珀の元へと向かった。



「おおっ! 無事に倒したようじゃな!」


 狐珀は二人を満面の笑みで迎え入れた。


「流石にちょっと苦戦しました」


「うん、まさか、あんなにでっかいと思ってなかったんだよ」


「うむ……それは儂もじゃ、以前儂が見かけた時に比べて倍以上大きくなっておった」


「えっ? そうなんですか?」


 どうやら、狐珀としては、もっと小さく弱いモンスターを想定していたようだ。


「って、あれ? 狐珀さん、どうしてわかるんですか?」


 狐珀は今回は直接相対していないはずなのに、大きさがわかっている。


「それは、千里眼を使って見ていたからじゃ」


「そんなことまでできるんですか?」


 どうやら、遠くを見る術を使って二人の戦いを見ていたようだ。


「流石にお願いした手前、何かあったらすぐに駆けつけられるようにな」


「それは……まぁ、最初モンスターを見た時はまずいかなと思いましたが……」


「あの骨を見た時は、流石に血の気が引いたんだよ」


 狐珀に言われたのは、あくまでもモンスターを吸収するという情報だけだ。

 人の骨があり、人間も吸収される可能性は考えていなかった。


「それはすまんかったのぉ。しかし、おそらく、あの骨はあくまでも人間が死んだ後に取り込んだものじゃないかと思うのじゃ」


「えっ?」


 二人はあのモンスターが生きたまま、人間を吸収して、それが骨として残っていたのだと考えたのだが、狐珀としては違うと考えていた。


「そもそも、何でも吸収できるのであれば、この建物の瓦礫など全て吸収しておるはずだし……それにあのモンスターは人間を生み出してこなかったじゃろ?」


「なるほど……確かにそれはそうですが……」


「吸収したモンスターを生み出してきたってこと?」


「まぁ、推測に過ぎぬがな」


 実際にもう倒してしまった以上、確かめることはできない。


 改めて狐珀と共に、押し潰したところまで戻る。


「しかし、雫月はなぜ、レーダーコンドルの方ではなくロックプリンを使ったのじゃ?」


「えっ?」


「レーダーコンドルなら、飛べるし、雹で同じ攻撃ができるのではないか?」


 確かに、わざわざ天井に張り付いたりする必要がなくなる。


「私も最初はそうしようと思ったんですが、大きな雹を作ると温度が下がって気が付かれてしまうかな? と思って」


 雹は当然冷たい。

 確かに、同じくらいの大きさの雹を作ると、それだけで室温が下がってしまう可能性があった。


「それから、雹だとぶつけた時に、割れてしまう可能性があると思います。そういう意味では岩のほうが確実かなと」


「なるほど、なるほど。確かに、雹だと地面にぶつかった時に割れた隙間で生き残られる可能性があるの」


 狐珀はその話を聞いて満足そうに頷いている。

 雫月が安易な方法を選ばなかったことを評価しているようだ。


「その結果が、完全にぺしゃんこに潰れたコレということか」


 狐珀も無事にモンスターが倒されたことを確認した。


「なにはともあれお疲れ様じゃ、このお礼はまたいずれするのじゃ」


「いえいえ、こっちもお世話になってますから」


「修行つけてくれるだけで十分なんだよ」


 ダブルウェアを使えるようになって、できることが圧倒的に増えた。

 確かに、今回の戦いでは苦労はしたが、それでも、ダブルウェアができるようになったメリットのほうが大きい。


「さて……それでは帰ろうかの」


「あ、ちょっと待ってください。この建物をもうちょっと調べたいんですが」


「あ、そうか。そういえば、まだ調べてなかったね」


「うむ、儂はあまりそういうのに興味はないが……任せるとするぞ」


 狐珀はあまり興味がないようだが、それでも、調べることは否定しなかった。

 雫月としては、この建物が何の目的で、いったい誰が作ったのか、知りたかった。


 そして、建物を詳しく調べた結果。

 一つの事実を知ることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る