第25話 攻略はいつものRTA

 練習したダブルウェアのお披露目も終わったところで、攻略に入っていく。


「ホシイヌの速さに、水の耐性があるので、速度が落ちなくなります」


 これで、歩きづらい水の大海でも、走り回れるようになった。


「ちなみに、僕の方は普通に速度が落ちてるんだよ」


 雫月の方はいい感じに相乗効果が働いた一方で、鳥楽音の方は少しだけ問題が出ている。


「うん、やっぱり、バブルカメだからね、少し移動が遅くなっちゃうかな」


 バブルカメは水中での移動はそれなりに早いが、陸上ではかなり遅い。

 もう一匹のヒビキの方の能力の方が大きいが、多少の影響は出ている。


「その分、防御は凄く硬いんだよ」


『なるほど、利点だけじゃないんだね』

『それぞれのモンスターの特徴が反映される感じなんだね』

『そうなると、ルナちゃんの方はどうなの?』

『クリアクリオネって……どんな特徴だ?』


「私の方は、逆に移動速度が上がって、防御がすこし下がっている感じですね」


 クリアクリオネはバブルカメとは逆の特徴になっている。


「さらに、水に触れていると、速度が上がります」


『速度特化ってことか!』

『つけるモンスターによって能力が変わってくるの面白いなぁ』

『ただでさえ速いルナちゃんが、更に速いなるのは凄いね』

『なるほど、その能力で今日中に攻略しちゃおうってことか』


「はい、そういうわけですね。それでは、行きましょうか」


 まぁ、雫月は速くなったが、鳥楽音が遅くなったので、このままでは置いて行ってしまう。


「それじゃあ、ルナちゃん。よろしくお願いするんだよ」


「はい」


 そうなると、まぁ、手段は抱えていくしかない。


『この移動方法も安定してきたな』

『Bランクエリアをお姫様だっこで攻略するパーティがいる件について』

『そんなパーティがいるわけ……』

『おるやろがい!』


 前に引き続き、お姫様抱っこで移動することに。

 これが一番速いんだから仕方がない。



 そんなわけで、浅瀬を駆け抜けていく。


「あ、モンスター……通り過ぎたんだよ」


 抱えられている鳥楽音がモンスターを発見したがすぐに見えなくなった。


『カメラに一瞬しか映らんかったね』

『なんだったんだろう?』

『多分、フラワ~ちゃんくらいしかわからん気がする』


フラワ~『キーカジキ。カジキの特徴である角みたいな部分、吻が鍵の形をしているモンスター。突くだけではなく、叩いたりさらには鍵の部分を回転させて攻撃してくる。水の大海の道中ではなかなか強いモンスター』


 視聴者の期待に答えてすぐさま陽花が解説をする。


『あの一瞬でわかるの凄いわww』

『ほとんど影しか見えなかったのにね』

『すぐにルナちゃんの走る水しぶきで見えなくなったもんね』

『というか、改めて考えると、走って水しぶきが立つのやばいなww』

『流石速度特化だなぁ』


 雫月が走っていると、水しぶきが立っている。

 もはや漫画の世界だ。


「ルナちゃんならきっといつか、水面も走れるようになるんだよ」


「いや、それは流石に……」


『水面を走るのは忍者のお仕事なんよ!』

『アメンボみたいなモンスターがいればできそうだけどね』

『うーん、今のところアメンボ系のモンスターは見たことないなぁ』


 水面を走れるようになるのはいったいいつになることか。

 まぁ、今は、水上バイクのように走るだけで良しとしておこう。



「そろそろ、中ボスエリアですが……」


 進捗としては半分ほど。

 通常であれば、中ボスを倒してセーフゾーンを開放するところなのだが……


「中ボスはスルーできるんだよね?」


「ええ、その代わりにセーフゾーンを使えないですけど」


「うーん、でも、配信的には戦ったほうが見栄えはいいのかな?」


「そうですね……でも、今日中にクリアはしたいですし……」


 中ボスに時間を無駄に時間を取られてしまうと、今日中のクリアが怪しくなる可能性もある。


『うーん、スルーするっていう選択肢そもそも初めて見たわ』

『中ボス……倒せれば確かに、宝物手にはいるけど、それにこだわらなければ別にいらないんじゃない?』

『最悪、ボスのいないセーフゾーンで帰ればいいしね』


「宝物……別に今はそんなに求めていないですしね」


「風凛ちゃんが欲しがるかもよ?」


「あー、それは確かに……」


 今までの探索で手に入った物は基本的に風凛が管理している。

 楽しそうに分析をしていたのだが……


風凛『スルーでもいいよ。その代わりボスの方のアイテムはきちんと頼むよ』


「あ、風凛さん。了解しました」


「よし、許可も取れたことだし、スルーするんだよ」


 中ボスよりもエリアボスを倒した方が当然手に入るアイテムもレアな物が多い。

 そっちを優先することにした。

 まぁ、今日はあまり時間がないというのは、メンバーではわかっているので、ある意味では既定路線ではあったのだが。



 中ボスをスルーして、更に進んでいく。


「ボスとも普通の敵とも戦わないで、これ見てる人は大丈夫なのかな?」


 ちょっと配信的に大丈夫なのかどうか不安になってはきたが。


『まぁ、半分作業用BGMとして聞いてるから大丈夫よ』

『なんだろう、こうめっちゃ速い水泳を見てる気分?』

『もしくはRTAを見てる感じ? それなりに楽しいよ』

『トラネちゃんも相手してくれてるしね』


「あ、それは良かったんだよ、それじゃあ、引き続き僕がお相手するんだよ」


 というわけで、配信的にも問題ないようだ。

 暇だからとコメントを読んでいたのが役に立っていたため、鳥楽音は嬉々として視聴者と雑談を続けた。

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