第24話 ダブルウェアお披露目

 海で遊んでから数日後……


「どうもルナルナチャンネルです!」


 雫月は水の大海にて放送を開始した。


『待ってた!』

『今日も水の大海からの放送ですか?』

『今日こそ遊びに来たと信じる!』

『今日もモンスターの封印?』

『あの封印したモンスターはどうなったの?』


「あ、今日はですね、遊びでも封印でもなく、攻略に来ました」


 今日の目的は、水の大海の攻略だった。


「今日でできればボスエリアまで行ってしまいたいと思ってるんだよ!」


 さらに、鳥楽音が補足をする。

 しかも、中ボスですらなく、今日だけで攻略してしまおうという算段だ。


『今日だけで攻略!?』

『一日で攻略とかできるの?』

『いや、ルナちゃんがやるって言ってるならできるんだよ!』

『何か秘策があると見た!』

『前回捕まえたモンスターが役に立ちそう』


「いい勘してますね! 今日は先日封印したモンスターを使って攻略していきますよ!」


 二人は先日封印したソウルストーンを取り出す。


「私の方がクリアクリオネ」


「僕の方はバブルカメなんだよ」


『ひょっとしてまたシンクロできるようになったの!?』

『カメは予想つくけど、クリオネとシンクロするとどうなるのか気になる!』

『この短期間でシンクロできるようになるのは凄い!』


「あ、いえ、実はまだこの子たちとはまだシンクロできるようになっていないんですよ」


 もちろん、シンクロできるように交流は続けているが、信頼感が足りないのかシンクロまでは至っていない。


「それでも皆、今回は驚くと思うんだよ!」


「ええ、私もそういう自覚はあります、騒ぎになりそうな予感もしてます」


 今回の配信は、攻略だけでなく、新技術のお披露目でもある。


『新モンスターとシンクロだけでもワクワクなのに、それ以外のもまだあると?』

『何々? シンクロじゃないんだよね?』

『なにかの告知とか?』

『あ、ひょっとしてモンスターが進化したとか?』

『それはありえる! 捕まえたモンスターではできてないけど、進化したモンスターとシンクロしたってことか!?』


 各々想像をするが、流石にそこにたどり着いたものはいない。


「まぁ、引っ張っても仕方がないので、早速お披露目しますね」


 そう言うと、雫月はさらにもう一つ、ソウルストーンを取り出す。


『うん? ソウルストーンが2つ?』

『なにするつもり?』

『前みたいに封印解いて手伝ってもらうとか?』


 視聴者の質問には答えず、雫月は両手にソウルストーンを握りしめて、同時にウェアを開始する。

 ソウルストーンの光から視聴者もそれがわかった。


『まさかに二刀流!?』

『いやいや、2つ同時のウェアってできないんじゃなかった!?』

『でも、ソウルストーンは反応してる!』

『まさか、2つ同時にウェアできるようになったの!?』


 流石の視聴者もこれには驚く。

 ダブルウェアはそれほどまでに異質な技術なのだ。


 光が収まった後、雫月はホシイヌとシンクロした状態になっていた。


「はい、というわけで、シンクロではありませんが……私は今、二つのソウルストーンを同時にウェアしています」


 見た目は、犬耳に尻尾が生えただけ、しかし、モンスターは確実に取り込まれた。


『まじかよ!』

『そんなことできるの!』

『どうやったらできるようになるんですか!?』


 当然、やり方が気になる視聴者も多い。

 しかし、


「やり方はですね……少しコツがありますが……まず、前提として片方とシンクロできないとできません」


 意識としては、シンクロできるモンスターの方には1割、もう片方のモンスターには9割の意識でソウルストーンを使うことになる。


『シンクロ前提だったかぁ……』

『残念、俺もできればと思ったのに、シンクロ前提じゃなぁ……』

『冒険者で講習会に参加できてるからいつかできるかも!』

『俺も、学校で練習会あるからシンクロ頑張ってみる!』


 シンクロ前提ということで、残念がる視聴者もいるが、それでも更に先を見せられたことで、やる気を出す視聴者もいる。


「シンクロさえできれば、ダブルウェア自体はそこまで難しくはないですよ、安定してやるためにはちょっと訓練が必要ですが」


 意識の分割がなかなか曲者で、それを完全に習得するまでに時間がかかってしまったが、一回成功させるだけであればそれほど難しくはない。


「つまり、僕もできるんだよ!」


 鳥楽音も自身のソウルストーンを取り出してウェアをする。

 無事に鳥楽音も成功し、その背中にはいつもの炎の翼が生えている。


「僕の場合は、これで、炎と水の両方の耐性がつくんだよ!」


『あ、そっか! トラネちゃんは火属性のモンスターでシンクロしてたから、それにプラス水属性のモンスターの耐性がつくんだ』

『それは便利! 水の大海で活躍できるね!』

『装備なしに、耐性がつくのはいいね!』

『ただし、シンクロの難易度がそもそも高い件』

『ひょっとて2つだけじゃなくて、もっといっぱいウェアできるようになるの?』


 2つできたのなら、3つ4つとできるかも、そう考えた視聴者もいる。

 当然、雫月と鳥楽音もそう考えて試したのだが……


「残念ながら、シンクロできるソウルストーンに加えて1つが限界らしくてね」


「その上で、2つ同時にシンクロをすると、身体が上手く動かせなくなってしまって、とてもじゃないけれど使えなくなりました」


 3つどころか、シンクロを2つ重ねるということがそもそも難しい。

 つまり、現状だとシンクロできるモンスター一体とそれ以外が一体ということになる。


「慣れればできそうな気がしますが……今のところお預けですね」


 夢のダブルシンクロはまだまだ先の話だった。


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