第22話 簡易海ダンジョン
「な、なんですかこれは!?」
無事にモンスターを封印して陽花の家に戻るとそこは一変していた。
「おかえり~」
「おっ! 帰ったか!」
陽花が迎えてくれるが、二人の様子もいつもと違う。
しかし、雫月はそれどころではない。
「ななな、なんで急に海ができてるんですか!?」
いつものダンジョンの地面は砂浜になり、奥には海が広がっている。
この短時間でいったい何が起きたというのか、雫月は混乱することしかできない。
「うん? だって、簡易ダンジョンだもんそのくらいはできるよ?」
「じゃの! やろうと思えば溶岩にだって、雪山にだってできるのじゃ!」
つい忘れがちだったが、そういえば、ダンジョン空間だった……
いや、しかし、そんな変化ができるなんて知らなかった。
「いや、よしんば地面を砂浜にできるくらいはいいですが! なんか凄い広くなってますよね? ここってそこまで広かったですか?」
いつもの空間もかなり広い空間ではあるが、いつもよりも広い。
何せ、水平線がかなり遠くに見えるのだ。その上には大きな入道雲も見える。
まるで、先程までいた水の大海みたいだ。
「ふふっ、やっぱり騙されたね。実は広さ自体は変わってないんだよ」
「えっ?」
「遠くに見える水平線は実は壁で、雲もただの絵なんだよ」
「絵っ!?」
言われてよく見ると、たしかに雲が全く動いていない……
ただのハリボテだった。
「なるほど……じゃあ、海も全部偽物ですか?」
結局変わったのは地面だけだと思ったのだが……
「いや、海は本物だよ? 奥の方までいけば結構な深さもあるから潜って遊べるよ!」
「ちゃんと塩味もするのじゃ!」
結局のところ、壁まではないだけで、結構な広さの海は本物らしい。
ちなみに、二人は水着にサングラス。
ビーチパラソルの下でドリンクなんか飲んでいて、完全にリゾート感覚だ。
「雫月様にもドリンクをお持ちしました」
「千晴さん!?」
「どうぞ」
いつもと変わらないロングのメイド服の千晴がいつの間にかやってきて、雫月にドリンクを手渡した。
なんとなく、流れで受け取ってしまった雫月は思わず、まじまじと千晴を見つめてしまう。
「……千晴さん、暑くないんですか?」
太陽は燦々と輝いている。見るからに暑そうだ。
「メイドですので」
メイドだからなんだというのか、よくわからないが、雫月は考えることはやめてドリンクを飲み始めた。
「……それで、結局どうして海にしたんですか?」
ダンジョンの中身を変えられるのは納得したけれども、結局その理由についてはまだ説明されていない。
「それは、修行するからに決まっておるじゃろう?」
狐珀が当然のように質問に答えた。
修行というのはもちろん、
「2つ同時にウェアすることの練習ですよね?」
「うむ! ダブルウェアの修行じゃ!」
先日狐珀が言っていた、2つのソウルストーンを同時に使うこと、その訓練をすることになっている。
「ダブルウェアって言うんですか?」
「うむ! 先程そう決めたのじゃ!」
名前も適当に決めたらしい。
まぁ、わかりやすいので特に異論はない。
「でも、練習するだけなら、わざわざ水属性のモンスターを捕まえたり、海を作ったりする必要はないんじゃないですか?」
そもそも、実は水属性のモンスターを捕まえるというのも狐珀の指示があったからだ。
もちろん、攻略のためというのも嘘ではないが、練習するに当たって必要だから捕まえてこいと言われたのだ。
「む? そういえば、話していなかったかの? どこまで話したんじゃったか……」
「私達が聞いているのは、狐珀さんが、何かを手伝ってほしいのと、そのためにはもうちょっと強くならないといけないから、ダブルウェアの練習をするということくらいです」
どこかのエリアが危機ということは聞いたが、まだ詳しくは聞いていない。
放送の疲れや戦って疲れたこともあって、詳しいことは後回しにしたのだ。
結局、そのまま強くなる方法の話しとなって……今に至る。
「お主ら、その状況で良く水属性のモンスターを捕まえにいったの……」
今思えば、たしかにもうちょっと詳しい事情を聞いてからでも良かった気がするが、ダブルウェアという事を聞いてテンションが上っていたのだ。
その結果が、レアモンスター耐久になるが……
「まぁ、よかろう。では、まず水属性のモンスターを捕まえてもらった理由じゃが……率直に言って水属性のモンスターでなければいけない場所に行くためじゃ」
「水属性のモンスターじゃないと行けない場所? 水の中とかですか?」
「うむ、お主らが今日行った水の大海。その海の中に海底洞窟があっての、それを超えた先に行ってもらいたいのじゃ」
「海底洞窟!?」
海の中というのも驚きだが、海底洞窟なんて聞いたことがない。
「まぁ、かなり分かりづらい場所にあるのじゃが……まぁ、そこは儂が案内する」
「なるほど……それなら、迷わなそうですね。でも、その先にいったい何があるんですか?」
雫月の質問に、狐珀は真剣な表情をした答えた。
「うむ……そこには、人間が建てた研究所があるのじゃ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます