第21話 レアモンスター封印耐久
まぁ、レアモンスターを見つけるまでとは言ったものの、限界はあるわけで……
「とりあえず、制限時間は3時間としておきましょうか。それで見つからなかったら諦めるということで」
「だね、流石に次の放送でも同じ内容にするのはどうかと思うし」
フラワ~『それでいいよ! でもできるだけ頑張って欲しいな!』
というわけで、時間を決めての配信となった。
ちなみに、頑張ってどうこうなる問題ではないのだが……
レアモンスターが出るかどうかは、完全に運次第だ。
「あれは……普通のウォータープリンですね」
時にモンスターは現れるものの、普通のモンスターばっかりだ。
「うーん、散歩するだけでも楽しいけど……って、あっ!」
30分ほど経った時、鳥楽音が声を上げた。
「ほら! あれ! カメじゃない!?」
鳥楽音が指差す方向には砂浜をノシノシと歩くカメのようなモンスターがいた。
今まで探した中で、カメのモンスターを見たのは初めてだ。
フラワ~『バブルカメ。基本的に背中にある甲羅に穴があり、そこから泡を吹き出す。穏やかな性格をしていて、危険になると泡を吹いて逃げ出すが、遅いので捕まえるのは簡単。ただし、追いつかれると甲羅に引きこもるので、攻撃はあまり効かない。陸上には甲羅を干すためにしか上がってこない』
「ふむふむ、なるほど、基本的に水の中にいるから見かけなかったんだね」
初見のモンスターということで、陽花が解説をしてくれた。
「フラワ~さん、あれは色違いですか?」
鳥楽音は元々のバブルカメを知らないので、色違いかわからない。
フラワ~『見たところ、身体の色は普通のバブルカメと同じだけど、ちょっと模様が違うかな? ほら、甲羅に亀の特徴の六角形がないでしょ?』
確かに、甲羅はあるものの、六角形の模様はなく、ツルツルとしている。
「ということは?」
フラワ~『色違いじゃないけどレアだよ!』
「やった!」
鳥楽音が喜ぶ。
「うわー、先を越されましたか……」
モンスターは先に見つけたもの勝ちにしている。
今回は、鳥楽音が見つけたので、それを封印する権利は鳥楽音のものだ。
「それで……トラネさんはどうしますか?」
「もちろん、封印するよ!」
見逃して別のモンスターを探すという選択肢もあるのだが、鳥楽音は封印することにした。
「カメってことは防御が強そう! サポート役になりそうだよね!」
鳥楽音の役割ともマッチしているため、封印することにしたのだろう。
「サポート役とタンクはまた別……」
「よーし! 封印してくるね!」
雫月が何か言っているが、鳥楽音の耳には入らなかった。
鳥楽音は、ゆっくりとバブルカメに近づいていく。
バブルカメはそれに気が付かず、ノシノシと歩いている。
そして、手が届く範囲まできた時、
「これで!」
鳥楽音はバブルカメにソウルストーンを押し付けた。
バブルカメが光となってソウルストーンに吸収される。
封印は無事に成功した。
「よし! これで僕の分は終わりだよ!」
『おめでとうトラネちゃん!』
『カメはタンク……だけど、まぁ、泡でサポートとかできるからトラネちゃんにはいいんじゃないかな?』
『トラネちゃんなら、きっとシンクロできると信じてる。そうなると、甲羅を背負うのかな?』
『なにそれ、ちょっと見てみたい』
視聴者は気が早いもので、もうシンクロした時のことを考えている。
「おめでとうございます。それじゃあ、後は私ですね……」
トラネが終わったので、残りは雫月だ。
一匹見つけただけで運を使い切った気がしなくもないが……気合を入れ直して再び歩き出した。
「……全然見つからない」
それから2時間ほどが経過した。
成果はさっぱりだ。
「普通のモンスターなら沢山いるんですけどね……」
砂浜から見える範囲では限界があり、潜らないまでも、水の中のモンスターを求めて、浅瀬を在るき始めたがお目当てのレアモンスターは見つからない。
「流石に、浅瀬以外は厳しいですしね……」
時折、遠くに大きな魚っぽいモンスターが見えるが、水中で戦うのは厳しいためスルーするしかない。
あれがレアだったらもったいないとは思いつつ、見なかったことにする。
そうやって、浅瀬と砂浜を往復することで2時間が過ぎてしまった。
「流石に疲れてきましたね……」
ずっと、水の中に足をつけているので、普通に歩くよりも疲労している。
さらに、柔らかい砂ということで、さらに足に負担がかかる。
「わっ!」
そんな雫月に、突如波が襲いかかった。
バランスを崩してしまった雫月は、そのまま転んでしまった。
「大丈夫!?」
遠くから鳥楽音の声が聞こえる。
すぐにそれに答えようと、立ち上がろうとしたその時だった。
「……?」
何か眼の前に生き物が漂っていることに気がついた。
それは、一見ただの波のゆらぎのようだが、よく見ると何やら動いていている生き物なことがわかった。
「……っ!」
とっさに、雫月はその生き物に手を伸ばし、掴んだ。
掌にも収まるくらいの小さなモンスターだった。
「……ぷはっ! フラワ~さん! このモンスターを知ってますか!」
起き上がりすぐさま、カメラに向かってみせた。
今まで見たことのなかったモンスターが、ピチピチと雫月の手の中で跳ねている。
レアであってくれ……そんな気持ちだった。
フラワ~『クリアクリオネかな? 水中だと完全に透明化しちゃってるモンスターだね! ちゃんと見ないと気が付けないよ。よく見つけたね!』
確かに、水の上から見たところで全く気が付かなかった。
いや、重要なのはそこではなく……
フラワ~『うーん、カメラで見ただけだとちょっと難しいけど……あ、コアが虹色っぽいね! 多分レアだよ!』
雫月に掴まれ水中から出たクリアクリオネは透明化を解除されて、透明な身体の中に虹色のコアが光っている。
「本当ですか! やった!」
無事にレアモンスターを見つける事ができた雫月は喜びを隠せない。
すぐさま、ソウルストーンを取り出して、封印する。
『おめぇえええええ!』
『もう少しで時間切れだったね! 見つけられてナイス!』
『結局、二人共レアモンスターを封印するなんて! 流石ですわ!』
「ありがとうございます!」
視聴者からの祝福のコメントにも満面の笑みで返す雫月は、封印したソウルストーンを優しく撫でるのだった。
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