第14話 ボスを討伐
フラワ~『ここのボス、ラヴァゴリラはマグマの中を自由に移動するゴリラの魔物。マグマの中から溶岩を取り出してそれを手に持って攻撃してきたり、投げたりする。マグマの中にいるため、こちらからの攻撃が非常にしづらい。おすすめは、水属性のモンスターで遠距離攻撃をすること』
エリアに入るや否や、陽花が解説を挟む。
雫月や鳥楽音は事前には聞いていたため、視聴者向けの解説となる。
エリアの中には、先程の湖ほどではないにしろ、結構な広さの溶岩溜まりがあった。
その中心には、先程陽花が言っていた、ゴリラのモンスターが堂々と立っていた。
『ゴリラかぁ、でかくて強くて、器用なイメージかなぁ』
『パッと聞くと、クマのが強そうな感じだけど……』
『ラヴァゴリラが基本マグマの中にいるから、戦いづらさはこっちの方が上かな』
『でも、水攻撃ができればこっちのが楽ではあるかな』
『ある程度水かけると、マグマが固まるんだよね』
『まぁ、水蒸気で視界がやばいことにはなるけどね』
火の火山と、水の大海で水の方が先に選ばれる理由が、属性有利が取れるためだ。
しかし、雫月と鳥楽音は水の大海に潜っていない。
そのため、水属性のモンスターは持っていない。
「でも、レーダーコンドルがいるから、雨は降らせられるんですよね」
レーダーコンドルは嵐を呼ぶ鳥のモンスター。
雫月のレーダーコンドルはレアモンスターではあるが、通常の技が使えないわけではない。
「相性は最高です!」
言いながら雫月は空に浮かぶ。
「レインシャワー!」
雫月の手から、水がシャワーのようにマグマに降り注ぐ。
水はマグマに当たると、蒸発して水蒸気となる。
しかし、マグマを冷やすことに成功して、マグマを固めた。
「よし! これでいけそうです!」
マグマを固めることに成功した雫月は、今度はラヴァゴリラの上へと移動する。
ラヴァゴリラの周りのマグマを固めてしまえば、ラヴァゴリラは動けなくなるという算段だ。
「ゴォオオオオオ!!」
しかし、ラヴァゴリラはボスとしてそう簡単にやられるわけにはいかない。
マグマの中から巨大な溶岩を持ち上げ、それを雫月に向かって投げる。
「わっ!」
溶岩をギリギリのところで避ける。
当たればただではすまないだろう。
「ルナちゃん! フォローするよ!」
鳥楽音がいつの間にか移動していて、火の矢をラヴァゴリラに放った。
ラヴァゴリラは火の耐性が強いため、火の矢が当たったところで何の効果もない。
しかし、火の矢はラヴァゴリラに突き刺さり、そこから火花を散らした。
「ちょっとした花火みたいなものだよ!」
バチバチと散らす花火はダメージこそないが、ラヴァゴリラからしてみれば、うっとおしいことこの上ない。
雫月に向かって溶岩を投げる手を止めて、火の矢を抜きに入った。
「隙ありです! レインシャワー!」
その隙に雫月はラヴァゴリラの上からシャワーを降らせる。
「ゴッ!?」
すぐに異変に気がついたラヴァゴリラだったが、時は既に遅し。
ラヴァゴリラの視界は、大量の水蒸気で覆われてしまった。
さらにカチカチと固まるマグマ。
ラヴァゴリラは動けなくなってしまった。
「これで終わりですかね?」
勝負はもう決したようなものだと一息つく雫月。
『なるほど! 確かに水属性の攻撃があれば余裕かもね』
『まぁ、上から雨みたいのを降らせる攻撃できる水属性のモンスターを持ってるやつどのくらいいるのかってところだけどね』
『やったね! 雫月ちゃん!』
動けなくなったラヴァゴリラを見て視聴者も喜ぶ。
フラワ~『待って! 早く倒さないと、ラヴァゴリラが溶岩を壊して出てくるよ!』
ラヴァゴリラは力が非常に強いモンスター。
放置していれば、時間をかけて固まった溶岩を壊して出てくるだろう。
「それはまずいですね! 早く倒します!」
雫月は水の雨を降らせることをやめて別の技を使う。
「ヘイルスピアー!」
雫月の手から小さな雹が出てきて、段々と形になっていく。
それは鋭い雹、まるでつららのような一本の氷の槍となった。
「えりゃっ!」
それを掴み、ラヴァゴリラに向かって放り投げる。
「ゴッ……!?」
よじるラヴァゴレームだったが、避ける事ができずに、頭からその槍が突き刺さった。
「ゴオォ……」
ラヴァゴリラはそのまま力なく倒れ込み、光となって消えていった。
「倒しました!」
『やったぜ!』
『技強すぎない!?』
『氷の技は火属性には相性悪いはずなのに、そんな簡単に倒すなんて!』
『雫月ちゃん、すごい!』
あっけなくやられたラヴァゴリラに視聴者も盛り上がる。
ともかく、これにてエリアボスの討伐は成功。
「それじゃあ、放送はこのあたりで……」
「……っ! ルナちゃん!? あれ!」
放送を締めようとしたところで、鳥楽音が指を指した。
「……!?」
鳥楽音が指差した方向を見て、思わず雫月は目を見開いた。
「……ふふっ」
そこには、一人の女性の姿があった。
その女性は、マグマの上に立っており、雫月の方を見て笑っていた。
それだけならば、まだ他の冒険者の可能性もある。
しかし、女性の驚くべき点は、その姿にあった。
女性は白と赤の巫女服のようなものを着ており、その上、
「金色の耳と尻尾?」
人間にはありえない、獣耳と尻尾が生えていたのだった。
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