第2章
第1話 これからの計画
雫月がモンスターに対する考え方について世間に一石を投じてから早数日。
その間に、雫月は学校でリオナと共に計画を進めていた。
「おおよそのシナリオはこんな感じでしょうか?」
「ああ、個人的にはまだ懐疑的な部分もあるが……コウレンさんにも言われたからな」
それは当然、学内でシンクロを広めるという計画だ。
以前放送でも、宣言した通り、本格的にアカデミーの教育の一環として取り組むことが正式に決定され、雫月はリオナと共にその流れを考えていたのだ。
「しかし……モンスターと仲良くなることが強くなる秘訣とはな……」
以前は力量不足ということで退陣を迫られていたリオナだったが、雫月の活躍もあり、続投が決定している。
他ではできない教育を行うということもあり、今、アカデミーは注目を集めているのだった。
「あとは実際にやってみるしかないだろう」
ざっくりとカリキュラムを立てることには成功した。
もっとも、どこにも事例のない初めてのことなので成功するかわからない。
「しかし、人数不足はどうしようもないな……」
その上で教えられる人間が全く足りていないのだ。
「そもそも、シンクロできているのが、私と鳥楽音先輩だけですからね」
シンクロという未知の領域にたどり着けた事例は未だ少ない。
「とはいえ、できるだけお前たちには頼らない方向性は維持したいところだ」
「いえ、でも私が言い始めたことですし……」
今回の提案はそもそもは雫月が始めたものだ。
そのため、雫月は自分が頑張るのは当然だという考えだったのだが……
「それはそうだが……お前だって忙しいだろう? 放送だって随分人が集まっているだろ?」
「ええ……先日50万人を超えました」
前回の騒動もあり、雫月のチャンネルは注目を集めた。
その結果が数字にもきちんと現れているのだ。
「そのお前を学校の教育で縛っているとそれはそれで面倒なことになりそうなんだよ」
今やアカデミーがあるダンジョン島で雫月のチャンネルを知らないものはほとんどいない。
シンクロはもちろん、雫月のダンジョン攻略には多くの人間が注目しているのだ。
「いえ、でも……今はダンジョンに入れないですし」
「それはそうだが……」
雫月の言う通り、現在ダンジョンは封鎖されていて入ることができない。
理由は、ダンジョンに閉じ込められるという謎の現象が起こったため、冒険者協会がその調査を行っているのだ。
「……早めにノウハウを生徒たちに伝える、それ以降はお前たちには偶に参加してもらうくらいの計画にしたつもりだ」
「……ですね。でも、何かまずいことがあったらちゃんと伝えてくださいね」
「ああ、わかっている」
これにて学内にシンクロを広める計画の話は終わり。
「さて、次は……学内の広報活動に関してだが……」
「はい」
雫月の活動はこれだけではない。
むしろ、こちらの方が雫月にとっては重要だ。
「他の理事からも無事に雫月のチャンネルのスポンサーになることの承認が降りたぞ」
「本当ですか!」
雫月の放送はもはや個人の域を超えたものになっている。
このままでは何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性すらあった。
そこで、今回アカデミーが雫月のチャンネルのスポンサーになることを決めたのだ。
元々アカデミーの宣伝をするために行っていた活動のため、その支援をもらえるのならば雫月は大歓迎だ。
「少々条件は付けられたがな」
「条件……?」
しかし、スポンサーが付くということは、ある種縛られることでもある。
条件という言葉に雫月は不穏な響きを感じた。
「まず、1つ目が大人の監督者をつけることだな」
「監督者? アカデミーの先生とかですか?」
「ああ、まぁ、これは私が兼任すれば問題ないだろう」
「いいんですか? リオナさんも忙しいんじゃ……」
「ああ、まぁ、暇ではないが……まぁ、雫月なら何か変なことはしないだろう。万が一の時に責任を取る役目みたいなもんだ」
「……ご迷惑をおかけします」
「万が一にしておいてくれよ」
とはいえ、実際雫月が何かをやらかす事態になることなど、それこそ万が一でしかないだろう。
これに関してはあまり不利な条件ではない。
「それともう一つなんだが……研究者を一人つけろとのことだ」
「研究者ですか?」
「ああ、研究部門の代表がな、戦闘部門だけずるいとのことだ」
なんとも子供じみた話ではあるが、雫月の活躍で戦闘系がかなり目立っているのだ。
それで、研究部門の方は危機感を感じたわけだ。
「それで研究部門から一人、お前の放送に協力させることを要求された」
「私の放送に参加……研究者がですか?」
「まぁ、例えばそいつが作った新アイテムのテストやら宣伝やらをして欲しいらしい」
「なるほど……あれ? 私にはメリットしかないですよ?」
「いや、しかし、お前の放送には秘密が多いだろう?」
「ええ……まぁ、信用できる人のほうが好ましいですが……」
そもそも、放送をしている以上ある程度漏れることはしょうがないが、それでも仲間はできるだけ信頼のできる人にしておきたい。
「知らない人間を入れるのはどうかと思うのだがな……まぁ、なんとかこちらもアカデミーの生徒という条件は付けることはできたがな」
「あ、生徒なんですか?」
「ああ、なんと言ったかな、資料が……ああ、これだ、えっと名前が……遥風風凛(はるかぜ ふうり)となってるな」
「……えっ?」
それは雫月も知っている人物の名前だった。
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