第2話 以降の放送
数日後、実際にこれからの雫月のチャンネルの活動について話し合うため、関係者が集まっていた。
「やぁやぁ、久しぶりだね」
「ええ、風凛さんお久しぶりです」
その中には、研究部門からやってきた風凛もいた。
「久しぶり~」
「私は初めましてかな? 華鳥鳥楽音なんだよ」
現在ここに集まっているのは、雫月、陽花、鳥楽音、そして風凛の4人だ。
ここに監督者としてのリオナと偶にサポーターとして由香里が参加することになっている。
「なんかこうやって集まると部活みたいだね」
陽花が周りを見回しながら言う。
活動を行うにあたり、専用の部屋をもらえてたり、待遇としては部活とほとんど同じだ。
しかし、それも当然だ。
「一応学校上の名目としては、放送部ということになっています」
「本当に部活なの!?」
「名目上だけですけどね」
学校からサポートをもらう上で、書類上の手続きとして個人のチャンネルというのは体裁が悪いため、そういうことでまとまったのだ。
「理事長さんが顧問の部活ってことなのかな?」
それを聞いた鳥楽音は少し嬉しそうだ。
「ふむ、部活とは、考えたこともなかったな」
風凛はクククと笑っている。
やはり少し楽しげだ。
「風凛さんは研究の方が忙しそうですしね。この活動に参加していて大丈夫なんですか?」
風凛は研究部門でも若いエースのような立ち位置だ。
そのため、忙しいはず、というのが雫月の考えだったのだが。
「確かに、忙しいのは忙しいがね。しかし、この話は私にもメリットがあるのだよ」
「メリット?」
「ああ、前回のように私が開発したアイテムをダンジョンで使用してもらったりな」
前回というのは、例の特別製ソウルストーンを使ったときのことだ。
「あれ以来、どうやら本当に問い合わせが来ているらしくてな。予算も増額された」
雫月の放送での宣伝効果によってその有用性が広まった結果、風凛の研究部門での評価が上がったのだ。
「まぁ、そういう感じで私にもメリットがあるから気にしなくていいよ」
「そうですか、それは良かったです」
これには雫月も安心した。
「それでは、早速ですが次回の配信についてです」
前置きも終わったところで、本題に入った。
「次回は色んな告知になるんだよね?」
「ええ、基本的にはアカデミーがスポンサーになったこととか、それに対しての変更点なんかをお話したりするつもりです」
「今はダンジョンも入れないもんね~」
「そうなんですよ。なので、この部屋からの雑談配信っぽくしようと思っています」
ちょっとした部活紹介みたいな形になりそう。
「ふむ、そうなると我々はどうする?」
内容を聞いて風凛が尋ねる。
「そうですね……説明するだけなら私と鳥楽音先輩だけでも足りますが……」
そもそも、メインの内容はダンジョン攻略だし、顔出しするのは雫月と鳥楽音だけで済む話ではある。
「風凛さんは放送に顔出すの嫌ですよね?」
手伝ってくれるとは言っても、放送に登場するのはまた別の話と雫月は考えていたのだが……
「いや、全然構わないが? むしろ、出るものだと思っていたがね」
「えっ?」
風凛の方は違う考えだった。
「さっきも言ったが、私の場合は顔が売れて困ることがないからね」
そもそも、風凛は売出し中の研究者なのでそこには全く抵抗がなかった。
「まぁ、ただ、毎回は面倒なので偶にということでお願いしたいが」
「それだけでも助かりますが……」
風凛がそういうのであれば予定はまた変わってくる。
協力者がいるという話をすれば、どんな人か視聴者は気になるだろう。
例えば、フラワ~こと陽花のことだって気にしている視聴者は多い。
実写で配信している以上、映らないように気を使うのは大変なので、先に紹介したほうが楽という事情もある。
そうなると、残り人の陽花なのだが……
「陽花も別にいいよ~」
ある意味で一番問題の人物である陽花なのだが、彼女自身は何も考えていない。
彼女自身が自身の価値をわかっていないというのが問題だ。
本当に出させていいものかと、雫月は困る。
「しかし、コウレンさんがなんて言うか……」
陽花に触れるとなると、陽花の両親にも触れる可能性がある。
それを危惧したのだが。
「あ、ママに聞いたらルナちゃんの放送ならいいわよ~って言ってたよ」
「えっ! 本当ですか」
光蓮が嫌がると思っていたのでそれには雫月は驚きを隠せない。
「うん、むしろママの方でもルナちゃんの関係聞かれてどうしようかと思ってたんだって」
シンクロという現象に関して、ルナとコウレンに何か関係があると考える人は多い。
コウレンの方にも、ルナに関する問い合わせが入っていたのだ。
「だから、この機会に私を通じての知り合いだって公開しちゃえば楽だわ、って言ってたよ」
「そうですか……」
懸念の一つだった光蓮の事が解決できるのであれば、かなり楽になる。
もっとも、陽花の危機感の薄さはそれ以上の懸念点であるが……
「それじゃあ、次回の放送はこの4人でしましょうか」
そういうことに決まった。
そして、内容だが……
「うちの研究で面白い機材があってだな……」
風凛が放送映えしそうな内容を提案したのだった。
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