第55話 モンスターとの関わり方

「どうもお久しぶりです! ルナルナチャンネルです!」


 事件から数日後、雫月は放送を始めた。


『久しぶりの配信! 待ってた!』

『聞きたいことがいっぱいあるんだよ!』

『学校は他の生徒さんは大丈夫だったの!?』


 久しぶりの配信だが多くの人が集まっている。

 しかし、それも当然……


『ルナちゃん、かっこよかった!』

『あの時の感想ぜひ聞きたかった!』

『あの完全にホシイヌになったのってどういうことなんですか!?』


 そう、雫月が事件の解決に関わってやったことを全部知られているのだ。



 ことの発端は、前回の放送で雫月が助けに行くと決めた時。


「すみません! ちょっと配信停止します!」


 流石の雫月も何が起こるかわからなかったため、配信を停止しようとした。


「これで、よし……陽花さん、見えてますか?」


フラワ~『あれ? 私は見えてるよ?』


「プライベート配信にして陽花さんにだけ見えるようにしてます。何が起こるかわからないので、アドバイスお願いします」


フラワ~『そういうことね、OK。任せて!』



 ということで、陽花にだけ見せるように設定したはずだった。

 しかし、実際は違っていたのだ。


『コメントはできなかったけど、映像は全部見れてたのよね』

『それな、流石に切り抜きだと本名は伏せられてたけど……』

『もう遅かったよね』


 そう、放送自体をプライベートモードにしたはずだったのだが、実際はコメントができるのを陽花だけに絞っただけで映像自体はそのまま配信に乗ってしまったのだ。

 ということで、無事に雫月の名前に陽花の名前、それに雫月が救出やボスと戦う時に行ったこと、全部放送されていたのだ。

 いわゆる、切り忘れである!


「あー、そのですね……」


 身バレはしょうがない、というか、アカデミーの生徒であることは好評しているので、問題ないとして。

 名字や名前もちょっと調べればわかるので、自分に関しては問題ない。

 陽花の名前が出てしまったのはちょっと誤算ではあるけれど、雫月と違って顔出ししているわけでもないのでここでは良しとしておく。


 それよりも、問題は……


「皆さんが聞きたいのはあのシンクロの件ですよね」


 窮地に陥った雫月がモンスターと完全に一体化してボスを討伐したことだ。


『そうそう! あれってどういう現象なの!』

『それもそうだけど、ソウルストーンから開放したモンスターに言うことを聞かせてたのがびっくりした!』

『ルナちゃんってテイマーなの!?』


 モンスターの封印を解くところもまた問題だった。

 あれを見た視聴者は、雫月がモンスターを使役することのできるテイマーなのではないかと考えた。

 そして、それはありえないとされていたものでもあるのだ。


「そうですね、その件についてちょっとお話します」


 今回の件に関して、雫月は陽花の母親である光蓮に相談をした。

 そして、ある程度の情報を話すことを決めたのだ。


「まず……私は何か特別な力があってモンスターたちに命令していたわけではありません。あの子たちは私のお願いを聞いてくれただけなんです」


『命令じゃなくてお願い?』

『違いがわからんが……』

『ルナちゃんとしては、あれは特別なことじゃなかったってこと?』

『つまり、ソウルストーンの封印を解いたことがあるってこと?』


「あ、はい。それで合ってます。私は日頃から封印を解いてモンスターと交流をしていました。あ、もちろんダンジョンの中ですよ」


 それが、擬似的なダンジョンであることは言わないが。


『まじか! 封印解くとか考えたこともなかったわ!』

『だよな! 封印したモンスターを開放するとか危険だと思ってたわ』

『いや、実際危険でしょ! 解くメリットなんてないわけだし』

『ひょっとしてそれがシンクロに繋がったってことでは?』


「あ、はい。多分、そういうことだと思います。つまり、モンスターと交流することでシンクロができるようになったんだと思います」


 多分というか、実際にそれが条件のうちの一つであるが、ここでは確証はないと言っておく。


『まじか! 俺もモンスターの封印解いて仲良くなったらシンクロできるってこと!?』

『大発見やんけ!』

『早速ダンジョン行ってやらなきゃ!』


「あ! ちょっと待ってください」


 シンクロの秘密について聞いた視聴者がそう言い始めるのは想像がついていた。


「先程もコメントにありましたが、モンスターの封印を解くことはとても危険です」


 単に交流しようとしても、相手は言葉も通じないモンスターなのだ、安易な開放は危険だ。

 しかし、今回公表したことによって人々が興味を抱くのは当然、抑えられるものではない。

 そこで、雫月は光蓮と相談してあることを決めた。


「冒険者協会では、プロの冒険者コウレンさんの指導の元、シンクロに至るための手伝いをすることになっています」


 実際にシンクロができる光蓮、コウレンがその助けになると言うのだ。


「私がさっき言ったことも、確実ではないので、その結果を待ったほうが良いと思います」


『冒険者協会がシンクロを解明するかもってこと!?』

『確かに、コウレンが手伝ってくれるなら自分でやるよりは確立高そう!』

『わざわざ、自分だけで危険なことしなくていいってこと?』


 冒険者協会、それに有名なコウレンまで参加するということで、視聴者は盛り上がる。

 もっとも、これで抑えられない人もいるだろうが、それに関してはもう諦めるしかない。


「それから、私の通っているソウルウェア・アカデミーでも同様に私が手伝ってシンクロの検証を行います」


『まじか! 学校でも!?』

『学校の方はルナちゃんが教えてくれるってこと!?』

『学校今からでも通いたいんだが!?』


 こちらも実験的なものになるが、学校でも同じことを行う計画を立てている。

 こちらは、指導者として雫月が参加する。


 陽花の参加はないので、そもそも陽花と交流することでモンスターが人は怖くないと思う、という条件がクリアできない可能性はある。

 しかし、雫月としては成功例が出る可能性はあると思っている。


「私にとって、モンスターは友達です。決して恐れるものではありません」


 今や陽花だけでなく、雫月もモンスターを恐れない。

 そんなモンスターと交流できる雫月は条件をクリアするのにふさわしいと言えるのではないだろうか。


「ご興味がある方は、冒険者協会、もしくはソウルウェア・アカデミーへぜひご連絡ください」


 ちゃっかり学校の宣伝もしつつ、雫月は今後に想いをはせるのだった。


 こうして、人とモンスターの関わり方はゆっくりとだが確実に変わっていくことになるのだった。


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これにて1章終了です!

区切りですので、今日はこの話のみになります。


引き続き2章は明日から投稿いたします。

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