第40話 驚きの姿

「お久しぶりです! ルナルナチャンネルです!」


 鳥楽音と無事にパーティを組んだ雫月は、入念に準備を行い、配信を開始した。


『待ってた!』

『久しぶりのルナちゃん成分の補給ができる!』

『今日はBランクに行くの?』


「はい、今日はBランクエリアの炎の火山に入っていきます」


『Bランクキタコレ』

『つまり、ルナちゃん、誰かとパーティ組んだってこと?』

『どんな子だろう、私! 気になります!』

『女の子でありますように、女の子でありますように、女の子でありますように』

『フラワ~ちゃんじゃないの?』


「はい、パーティを組みました。フラワ~さんではないですが、女性ですよ」


『やったぜ!』

『女の子同士のてぇてぇを期待する』

『いや、ダンジョン配信にてぇてぇを求めるなとw』

『ダンジョンにてぇてぇを求めるのは間違っているだろうか?』


「というわけで、ご紹介します。パーティメンバーのトラネさんです」


「ど、どうも……トラネだよ」


 紹介されて、動画に映る鳥楽音。

 流石の鳥楽音も、初めて生放送に出るというだけあって緊張気味だ。

 ちなみに、彼女の冒険者名はカタカナでトラネだ。元々珍しい名前なのであまり違和感はないということでそうしている。


『和風美人来た!』

『はかどる! はかどるぞ!』

『ルナちゃんと同じ制服ってことは同じ学校の学生さん?』


「あ、そうですね。トラネさんは私の学校の1つ上の先輩です」


『一つ上……?』

『あ、そうか、ルナちゃんって17歳だっけ』

『身長だけ見ると、1つ差には見えないね』


「失礼な! 私はれっきとした17歳です!」


 ぷりぷりとコメントに怒る雫月。


「ふふっ、確かにルナちゃんは子供の頃からあんまり背が変わっていないんだよね」


 それを見て、鳥楽音も笑い、からかいに便乗する。

 多少の緊張はほぐれたようだ。


「ぐっ、私だって毎日牛乳を飲んでるんですよ! でも伸びないものは伸びないんです!」


「僕としては撫でやすいからいいんだよ」


 そう言って、鳥楽音は雫月の頭を撫でる。

 確かに、その位置は、鳥楽音にとって手を置きやすい高さにある。


『おい、誰だ、ダンジョン配信にてぇてぇを求めるなって言ったやつは』

『てぇてぇ……』

『学校の先輩後輩かぁ、アリだな』

『昔からってことは幼馴染みたいな感じなの?』


「幼馴染……というにはちょっと離れていた時期もありましたが」


「まぁ、でも昔からの知り合いではあるかな」


「そうですね」


 最近はあまり絡んでいなかったものの、こうやって気軽に話せる仲は十分幼馴染と言って良いだろう。

 そんな二人の関係を視聴者も理解し、更にてぇてぇコメントが盛り上がる。


『ちなみに、トラネちゃん? はBランクは初めてなの?』


「あ、はい。そうだよ。Cランクまでは一緒にパーティを組んでいた人がいたんだけど、ちょっと理由があってそこで離脱しましたんだよ」


「私としては、助かりましたけどね」


「うん、めぐり合わせってやつなんだよ」


『お互い初めてかぁ』

『ちなみに、今日はBランクのどこに行くの?』

『ダンジョン島にはBランクエリアは2つあったと思うんだけど』


 ダンジョン島にあるBランクのエリアは2つ。

 炎の火山と水の大海だ。

 それぞれ、名前の通り、炎系のモンスターと水系のモンスターが出るエリアになっている。

 そして、今回雫月が選んだのは……


「今日はですね、炎の火山の方に行きます」


「本当は水の大海の方が難易度が若干低いんだけど、僕のモンスターが炎系だからかな」


『あー、確かに、炎系に水はきついもんね』

『相性で言うと、最悪の部類か』


 トラネの言葉に、視聴者も納得をした。

 火は水に弱いのは凄くわかりやすい相性だ。


「ですね、まぁ、トラネ先輩なら水の大海でも問題ないとは思いましたが、念を入れてって感じですね」


 そもそも、今日の名目は鳥楽音のお披露目で、あまり深く潜るつもりもない。


「今日はゆっくりと連携を確認しつついけるところまで行けたらと思っています」


『なるほど、了解』

『まぁ、パーティの慣らしは重要よね』

『ルナちゃんなら強いし、物足りなさそう』


「あ、ちなみに、トラネ先輩も私に負けず劣らずの強さですよ」


『えっ!?』

『ま!?』

『あの、Cランクダンジョンを蹂躙したルナちゃんと同じくらいの強さって相当では?』


 実際、陽花の家のダンジョンで模擬戦をした時は、ほぼに互角の戦い。

 むしろ、雫月が負けることの方が多かったくらいだ。

 もちろん、訓練なので両者とも本気ではないが……


『まさかとは思うけど……トラネちゃんもルナちゃんと同じようにシンクロしたり……』


「鋭い! まさにその通り!」


 雫月の言葉に、視聴者もざわざわする。


「多分、皆さんびっくりすると思いますよ」


 何せあの陽花さえも驚いていたのだ。

 雫月は視線で、鳥楽音にウェアを促す。

 それを受けた鳥楽音は頷き、自身のソウルストーン、ヒビキをウェアする。


 ソウルストーンのエネルギーが鳥楽音の中に取り込まれる。

 その全てが取り込まれた時、鳥楽音の身体には変化が現れていた。


『ふぁっ!?』

『まじで!?』

『確かに! これは犬耳どころの問題じゃない!』

『それ! 熱くないの!?』


 視聴者も当然驚愕したその姿とは……


「うん? 特に熱さは感じないかな」


 鳥楽音の背中から燃える翼が生えていたのだ。

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