第26話 モンスターの進化

「今日もダンジョン配信やっていきます!」


 いざ配信の日がやってきた。


『こんルナー!』

『待ってた!』

『風の高原行くってマジ?』

『準備随分時間掛かったね』

『そりゃ、風の高原はCランクのエリアだと一番難しいからな!』

『言うて、一週間は短くね? 大丈夫?』


「そうですね、やっぱり風の高原は大変だといろんな人から伺っていましたので。それ相応に準備をしました」


 風の高原の攻略が難しいというのは放送を見ている人たちでも共通の認識だ。

 むしろ、1週間という短い期間の準備で大丈夫かという心配すらある。


『空飛んでるのがなぁ……』

『遠距離攻撃できるソウルストーンじゃないとほんと面倒なんよ』

『逆に遠距離攻撃できれば簡単なんだけどね』

『ルナちゃんのホシイヌって遠距離攻撃できなくなかった?』

『えっ? 大丈夫なの?』


「あ、今日はいつもの子は使いません、別のソウルストーンを使います」


『えっ!? あの強いホシイヌを封印!?』

『犬耳ルナちゃん見られてないと!?』

『えー…‥ちょっと残念』

『いや、見られないのは残念だけど、ひょっとして攻略のためにレベル上げてた?』


「先延ばしにしてもしょうがないので紹介すると今日力を借りるのはこの子、先日の放送で封印した、マッドプリンです」


 雫月が懐からソウルストーンを取り出す。


『マッドプリン!?』

『確かに泥飛ばしは遠距離攻撃だけど!』

『雑魚じゃん!』

『それは流石に……』


 マッドプリンが弱いことは視聴者も知っている。

 むしろ捕まえたところも大半の視聴者が目にしているので、本当に大丈夫かと心配される。


「ふふふっ、そのための準備期間ですよ」


 しかし、反面雫月は自信満々だ。


フラワ~『マッドプリン。ロールプリンと同じプリン系のモンスター。敵としての情報は割愛。ウェアした時の攻撃手段は主に泥飛ばしになる。攻撃としてはかなり弱め、相手の行動を阻害するなどサポート役になる』


『この解説は花ちゃんだ!』

『おっ! 鬼畜花きた!』

『敵としてじゃなくて、ウェアした時の情報助かる』

『ほへぇ、サポート役なんか』

『花ちゃんからも弱い言われてるやん! 早く変えよう!』


「フラワ~さんお疲れ様です。フラワ~さんは意地悪ですね、わざわざマッドプリンの情報を出すなんて」


 もちろん、陽花にそんなつもりはない。


「皆さんおっしゃることはわかります。しかし! 私には秘策があるのです! 見ててください」


 雫月はそう言って、ソウルストーンをウェアした。

 一瞬の光、その後の姿は……


『ふぁっ!?』

『犬耳……はないけど! でも……!』

『なんか身体に岩が張り付いてる!?』

『どういう現象!?』

『ひょっとしてまたシンクロか!?』


「正解! これはシンクロです!」


 その言葉に視聴者はざわつく。


『まじか!? ホシイヌだけじゃなくてマッドプリンともできるの!?』

『確かにシンクロでもないと信じられない現象だけども!』

『ルナちゃん普通にシンクロできるようになってるの草なんだわwwww』

『マッドプリンともできるってことは、やっぱりシンクロって人依存なのかな?』

『それで訓練期間としての時間だったってことか』

『うん? マッドプリン? それやったら泥じゃないのん?』


「おっ! いいところに気が付きましたね! そうです、この子はもはやマッドプリンではないんです!」


 堂々と雫月は宣言する。


「マッドプリンから進化してロックプリンになったんです!」


 その宣言に一瞬コメント欄が止まり。


『えっ?』

『えっ?』

『えっええええええええええええ!?』

『!?!??!?』

『進化!? ソウルストーンが進化!?』

『そんなのアリエルの!?』

『あり得ないなんてことはありえない!』

『あるやろがい!』


 一斉にコメントが流れ始めた。


『進化って確かにあるって言われてたけど! 本当に!?』

『これは伝説の瞬間なのでは?』

『本当の意味で神回だし、資料映像として最高です』

『まじでその道の人たちが協力要請するレベルじゃねwww』

『研究者です。DMしますので研究にお付き合いいただけませんか?』

『早速きてますwwww』


「あー、お誘いはありがたいんですが、私自身よくわかっていない点がありますので……」


 雫月としては陽花のことを話せないからこう言うしかない。


『まぁ、どのみち優先権はアカデミーだよなぁ』

『ルナちゃん学生だしね』

『なるほど、つまりアカデミーに行けばルナちゃんに話を聞けると?』

『流石にそれは駄目だろ』

『ちゃんと筋通さないとその辺り厳しいんだぞ』


 雫月自身が学生であることもあり、その身分を有効活用することにした。

 ちなみに、研究に関しては風凛を通じて後々に話をすることが決まっている。


フラワ~『ロックプリン。マッドプリンから進化したモンスター。全身が石の破片で覆われているが中身は泥のままである。主な攻撃方法としては、泥や石を飛ばすこと。マッドプリン時代よりも攻撃が優れておりダメージも大きい』


『安定の解説wwww』

『ていうか鬼畜花のモンスター解説に新モンスターもあるのかよwww』

『新モンスターってことは適当解説?』

『いや、ロックプリン……聞いたことあるな。確か土の洞窟のイレギュラーモンスターじゃなかった?』

『あ! どっかで聞いたことあると思ったらそれか! 接敵したパーティーが全滅したって噂立ったよな!』

『一回しか目撃例ない幻のモンスターだぞ!?』

『そんな解説できる鬼畜花は何者wwww』


 実際のところ、ロックプリンに関しては陽花も先日初めて見たのでその時に調べたものだ。

 しかし、それを言うことは当然ないのだった。


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明日の投稿は10時,20時の予定です。

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