第17話 レアモンスターの封印

 土の洞窟に入ってすぐに雫月はモンスターと接敵した。


「来ました。あれはマッドプリンですね」


『マッドプリンか。まぁ、余裕っしょ』

『あれ? マッドプリンってこんな色だっけ?』


フラワ~『マッドプリン。ロールプリンと同じプリン系のモンスター。ロールプリンが筒型に対して、マッドプリンは通常茶色で泥に覆われた丸形をしている。攻撃方法は土や泥などを飛ばしてくる、目潰しだけかと思いきや結構痛い。平均レベルは5程度』


『モデレーターの高速詠唱だwww』

『この速さでモンスター解説ww』

『流石、モンスターに関してはは任せろと言うだけあるな』

『結構痛いwwww』

『やっぱり普通は茶色だよな、色違う?』


フラワ~『色違い! レアだよ! 捕まえよう!』


『えっ? 捕まえる? プリンを?』

『雑魚モンスターやぞ?』

『レアとはいえ流石に……』


「フラワ~さん……了解です」


 視聴者の反応とは裏腹に、雫月はフラワ~の指示に従う。


「よいっしょっと!」


 マッドプリンが飛ばしてくる泥攻撃を避ける。

 しかし、雫月はそこから反撃をしなかった。


『なんで反撃しなかったの?』

『いや、捕まえるってことは攻撃できないでしょ』

『あっ、そうか、雑魚すぎて攻撃したら倒しちゃうのか!』

『ルナちゃん強すぎるから』


 そう、相手は入口付近に出てくる弱いモンスター。

 雫月の攻撃がまともにあたったら倒してしまう。


フラワ~『中心にあるコアを壊さなければ倒したことにならないよ。泥を剥いでやれば捕まえやすくなるから』


「了解しました! やっ!」


 そんなフラワ~の指示をもとに、中心を外して周りを削るように泥を剥がしていく。

 ある程度剥がしたところで、急にマッドプリンの動きが悪くなった。


「今!」


 その隙を見て、雫月は近寄ってソウルストーンをマッドプリンに押し付けた。


「封印!」


 雫月の言葉と共に、マッドプリンはソウルストーンに吸収されていく。

 やがてそこには何もいなくなった。


『おめー!!』

『へぇ、ソウルストーンでの封印ってこういうふうにやるんだ』

『知ってたけど、見るのは初めて』

『でも、マッドプリンなんて捕まえちゃってよかったの?』

『結構時間かかっちゃったし無駄じゃない?』


 無事に捕まえた雫月。

 しかし、なぜ捕まえたのか視聴者は不思議がる。


「えっと、それはですね。フラワ~さんとの約束になってまして」


フラワ~『来た! レアモンスターゲット! どんな特殊行動するのか楽しみ!』


「……とまぁ、フラワ~さんはイレギュラー……レアモンスターにご執心でして、見かけたら捕まえる約束になってます」


『そういうことwwww』

『モンスターマニアだったかwww』

『あんだけ早くモンスターの行動解説できたのもそういうことね』

『OK把握した。まぁ、イレギュラーにこだわる人がいるのもわかる』

『イレギュラーじゃなくてレアかwww』

『言い得て妙だなww』


 雫月がフラワ~との約束を話すと、視聴者はフラワ~と雫月の態度から色々と察して笑う。

 しかし中には。


『でも、大丈夫なの? 攻略速度下がらない?』

『モンスター叩き潰す姿見たくて来たんだけど』

『前回の大味な戦い方に惹かれた人がっかりしそう』


 否定的な意見も湧いた。

 しかし、それは雫月も想定をしていたので焦ることはない。


「それに関しては心配無用です。お、ちょうどいいところにまたマッドプリンですね」


 タイミング良く再びマッドプリンが現れた。


フラワ~『通常個体。研究済み。いらない』


「了解、潰します」


 今度は雫月は敵の泥攻撃を避けて、そのまま反撃をする。

 グチャっという音と共に、マッドプリンが地面のシミになった。


『ふぁあああああ!』

『やっぱこれよwwwww』

『フラワ~ちゃんwwwwいらないてwwwww』

『なるほど把握したwwww』

『自分が知ってるモンスターはいらないってことねwwww』

『マッドサイエンティストwwww』


 雫月の倒し方、更にフラワ~のコメントに視聴者が湧く。


「まぁ、フラワ~さんは未知のモンスターに興味があって、逆に言うと、知ってるモンスターにはあまり興味ない人なので」


 実際にはないわけではないが、特に捕まえる必要がないのでスルーするという感じである。

 ちなみに、例えばCランクエリアの通常モンスター程度であれば陽花は両親の関係もあってほとんどの個体と交流したことがある。

 持っていないのはいわゆるレアな個体のみだ。


「流石に自分の身を危険に晒してまでモンスターを捕まえたりしませんが、安全な限りは捕まえていきます」


『OK。ひとまずはレア個体のみって思っておけばOKね』

『そういうことであれば納得した』

『まぁ、レア個体なんてそうそう出てくるもんじゃないしね』

『丸一日潜っても見つかることなんてそうそうないしね』

『そのあたりは運次第だね、運が悪いとイレギュラーになる』

『いきなり遭遇してましたが?』

『マッスルゴブリンのレア個体(ボソっ)』


フラワ~『あっ! 確かにマッスルゴブリンのレア個体もいいね! いつか捕まえに行こう!』


「フラワ~さん!?」


『wwwwww』

『鬼畜フラワ~wwww』

『鬼畜花さんいいっすねwwwww』

『マッスルゴブリン周回! レア個体が出るまで帰れません!』

『それはちょっと見たいけどwwww』

『運が試されるwwww』


 冗談なのか、本気なのか。

 当然陽花としては本気であったりするのだが、それはそれとして陽花のキャラクターは放送でも受け入れられたのだった。

 雫月に無茶振りをする鬼畜花として……

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