第14話 彼女の事情

本日2話目になります。

どうしてそうなったかは前話にて書いてあります。

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 雫月の現状について判明したところで話は一旦区切りとなったわけだが。


「陽花さんのおかげで私のチャンネルが盛り上がったならお礼をしなければなりませんね」


 陽花のおかげでチャンネルは絶賛ばずっている。

 今まで鳴かず飛ばずだった登録者数もうなぎのぼりだ。


「昨日から凄い勢いだものね。10万ももうすぐじゃない? 古参が名乗れるのは嬉しいわ」


 光蓮の言う通り、登録者数は現在7万というところ。

 それもこれも、陽花がソウルストーンを拾ったところから繋がっている話なのだ。

 雫月としては、陽花になにかしてあげたいところなのだが。


「う~ん、陽花は特になにかしたわけじゃないからな~」


 そんなことを言う陽花。

 陽花としては、単にソウルストーンを拾って封印されていた子と遊び、返しただけなのだ。

 なんの特別なこともしていないと本気で思っている。


「いやいや、その何気ない行動に助けられましたので!」


 しかし、雫月としては何も返せないのは納得がいかない。

 自分にできることなら、なんでも言って欲しいと言うと。


「そうだなぁ。じゃあ、また遊びに来てくれればいいよ? 陽花もまたツキヨウちゃんと遊びたいから」


「そんなことでいいんですか? むしろそれは私がお願いしたいところなんですけど」


 陽花と接するツキヨウは楽しそうだった、ここでならば気軽にコミュニケーションも取れるし、雫月としては是非にお願いしたいところではあるけれど。

 しかし、これではお礼にならない。


「もうちょっと何かなにですか? チャンネルの恩人とも言える陽花さんに何か恩返しがしたいんです」


「う~ん……」


 雫月の言葉に、陽花も考え始める。


「そもそも、先輩はどうして配信者をやってるの?」


「えっ?」


「いや、特に理由はないんだけどなんか気になって」


 これは陽花の感覚によるものだが、なんとなく、雫月の真面目そうなイメージと配信者というイメージが合わなかったのだ。

 なので、その差を埋めるための質問である。

 もっとも、陽花はそこまで考えてはいないが。


「それは……」


 突然の陽花の質問に、雫月は言葉を窮した。


「あ、もしかして理由とかなかったりする?」


「あ、いや理由はあるんですけど……ちょっと重い話になるかもしれなくて」


「重い話?」


 雫月は迷った。ほとんど初対面に近いこの子に話して良いものかと。

 しかし、結局話すことにした。


「陽花さん、光蓮さんも、よければ私の事情について聞いてもらっていいですか」


 この二人なら信用できるだろう。

 むしろ、何か力になってくれるかもしれない、そんなちょっとの希望もあった。



「私の家、月桜家は元々ダンジョン探索事業で成功した家でした」


 ダンジョンが初めて発見された時、日本でいち早くそこから得られる宝物に注目をして探索者たちの支援をした家だ。

 それ以降、月桜家はダンジョンに関する様々な事業に手を出し、成功することとなった。

 ソウルウェア・アカデミーも月桜家の事業の一つであり、理事長も月桜家の人間が努めていたのだが……


「実は、今私の父が行方不明になっているんです」


 雫月の父親はその月桜家の当主にして、ソウルウェア・アカデミーの理事長を努めていた。

 しかし、数年前に引退をして今は別のものに変わっている。


「……聞いたことがあるわ、月桜家の当主がダンジョン探索中に行方不明になったって」


 光蓮はそのニュースについて聞き覚えがあった。

 当時、繁栄を極めた月桜家が裏で闇事業と繋がっていたという話。

 そんな話が出て以降、当主夫婦は娘を残して行方不明になっている。

 それがつまり、雫月の両親ということだ。


「父がそんなことするはずありません!」


 しかし、雫月はそれを否定する。


「両親はきっと何かに巻き込まれたんです!」


 月桜家が行っていたほとんどの事業は別の会社に移行され、現在残されているのは、ソウルウェア・アカデミーのみ。

 理事長は代理として、雫月の叔母が努めている。

 しかも、それも、うまくいっているとは言えず理事会からは変更を求める声も上がっているらしい。


「だから私は! 私の価値を証明しないといけないんです!」


 雫月が配信者になった理由。

 それは、自分がソウルウェア・アカデミーの優れた学生だと示すことで学校が優良だと示すため。

 さらに、行方不明の両親に自分をアピールするためだ。

 私はここにいると。


「……なるほどね」


 光蓮は雫月の話を聞いて納得をした。

 月桜家の没落に関しては、自分も冒険者の一人として話に聞いていた。

 それどころか、雫月の両親にだって会ったことはある。

 確かに、不正に手を染めるような人間に見えなかったというのが光蓮の印象だった。

 実際のところ、光蓮が雫月のことを覚えていたのも、その両親のことがあったからというのが大きな理由だったりする。


「……なるほどね?」


 陽花は光蓮と同じ言葉を発した。

 しかし、疑問符がついている。

 陽花には、雫月の事情がほとんど理解できなかった。

 先輩、大変なんだなぁと思ったくらいだった。


 ただ、陽花も冷たいわけではない、

 大変そうな先輩、そんな先輩に何かできないかと考え始めた。


 ……当初、自分がお礼として何かすることはないか? と聞かれたことはとっくに忘れている陽花である。

 そして、陽花はいい考えを思いついた。


「陽花が先輩の配信に協力しようか?」

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