第1話 伝説のはじまり
ソウルウェアを対象として学校である、ソウルウェア・アカデミー。
そこではソウルウェアの才能を持ったものが、授業としてダンジョンに潜り、探索し、戦い成長をしている。
「今日はこれで終了にいたします。またお会いできることを祈ってます」
月桜雫月(つきおう しづく)はそんな学校に通う生徒でもありその攻略を配信する配信者だ。
今をときめく、ソウルウェアであり、しかもその評価はソウルウェア・アカデミーの中でも折り紙付きだ。
その上、雫月はソウルウェア・アカデミーの理事長の姪でもあり、少し小さいが容姿端麗。
そんな雫月が配信をすると、それはもう沢山の視聴者が着く。
……と思いきや。
日課であるダンジョン配信を終えた雫月は自分のチャンネルを確認する。
「登録者数……34……増えてませんね」
登録者数34、それが多いという人はほとんどいないだろう。
しかも、この34という数字もほとんどが身内のものだ。
いわゆる雫月は底辺配信者だった。
「やはり、もっと積極的に宣伝したほうがよろしいでしょうか……」
ダンジョンが一般的になり、ダンジョン配信というものがコンテンツの一つになって以来、配信をする人は増えている。
雫月のチャンネルは女子学生がただダンジョンに入っていくだけの内容を配信するものだ。
雫月の評価は確かに高いが、それはあくまでも学園生の中での話。ダンジョ配信者の中では普通程度で収まってしまうのだ。
「こんなことで学校の紹介になるのかなぁ」
雫月はとある事情で自分の学校であるソウルウェア・アカデミーを宣伝するために放送をしている。
もっとも、あまり結果は出ていないが……
「はぁ……早く帰ってお風呂にでも入りましょう」
いつまでも登録者数を眺めていても増えることはない。
ため息をついた雫月は歩き出そうとして。
「おっと、すみません」
「いえいえ、こちらこそよそ見をしておりました」
道端で人とぶつかってしまった。
放送画面の数字を見ていたせいで、他に注意がいっていなかったのだ。
お互いに謝ったことで、何事もなくすれ違っていく。
……いや、実際には何事もあったのだ!
しかし、それに雫月が気がつくのは後になってからだった。
ソウルウェア・アカデミーではダンジョン攻略だけでなく支援するための人材の育成も行っており、ダンジョンから持ち帰られた宝を研究したり、ソウルウェアそのものの研究をしたりと、活発に活動していた。
「さ~て! 今日も帰ってあの子たちと遊ぼうかな!」
花宮陽花(はなみや ひかり)はソウルウェア・アカデミーのダンジョン支援科に通う1年生である。
「それじゃあ、今日はこれで終わり。皆気をつけて帰るように。ダンジョンに行くものは怪我をしないように」
授業終わりに担任の先生が告げて、放課後になる。
ダンジョン探索科では。
「ねぇねぇ、今日はどうする?」
「うーん、今日こそはCランクエリアで探索したいかも」
「ごめーん、今日は家の用事でダンジョンに潜れないんだ」
生徒たちはそれぞれ、ダンジョンに向かう計画を立てる。
支援科の生徒たちも。
「まずい、レポート書かなきゃ!」
「えっと、あの資料はたしか図書室にあったかな?」
研究メインの生徒たちは、我先にと自分の研究室へ急ぐ。
そんな中、陽花はそんなクラスメイト達には目もくれず一人で帰宅の準備をする。
いつもだったら、話しかけてくる友人がいるが、今日は学園からの依頼でダンジョン探索に向かっているのだ。
「それじゃあ、また明日~」
「あ、陽花ちゃん、また明日。それでさぁ」
陽花に友達がいないというわけではない。
クラスメイトの仲は良好である。
しかし、ダンジョンに潜れない、学内の研究にも参加しない。
そんな陽花は少し浮いた存在であった。
「ふんふんふ~ん……あれ? これはソウルストーン?」
学校からの帰り道、鼻歌を歌いながら少し寄り道をして帰っていた陽花は道端にソウルストーンが落ちていたことに気がついた。
「誰のものだろう? 可哀想」
陽花はすぐさま、そのソウルストーンを保護した。
ソウルストーンには目印がなく、持ち主の特定は難しい。
「う~ん、よし、持ち主が見つかるまで預かっておこう!」
そのまま、陽花はソウルストーンを持ち帰った。
陽花はソウルウェアではないため、その力を使うことはできない。
陽花がソウルストーンを拾ったのは、単なる人助け、モンスター助けのためだった。
「家に帰ったらどんなモンスターが封印されているか見ちゃおう」
しかし、そんな陽花にはとある才能があったのだ。
雫月がそのことに気がついたのは、彼女が自分の家に帰ってお風呂に入ろうとした時のことだった。
「ない! ないです! 私のソウルストーンがないです!」
雫月は人とぶつかった時に、自分のソウルストーンを落としてしまったのだ。
ウェアしていない状態でダンジョンに潜ることは原則禁止されている。
しかも、落としたソウルストーンは雫月が持つ中でも、お気に入りで愛用しているものだった。
「これでは放送できません!」
ただでさえ、愛用のソウルストーンを使っていても苦戦するのに、予備として持っている他のソウルストーンでは魅せる放送はできない。
いつもできていないが。
雫月は急いで人とぶつかった地点まで戻るが、いくら探してもソウルストーンは見つからなかった。
諦めて家に帰った雫月は知らなかった。
これが雫月の運命を変える大きな出来事になることを。
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