第二十二話.真面目にお仕事探しましょう
「仕事ないなぁ」
「そうですね」
一日中歩いて探してみたものの、こんな小さな村にほいほい働き口があるはずもなく。よそ者である彼らには厳しい環境だった。途方にくれたキツネは、収穫のなかった今日に肩を落としていた。
「それはそれとして腹は減るし」
「そうですね」
宿は前金で払っていたため追い出されることはないが、ろくに食べるものもないのはこたえる。宿の部屋に戻ってくると、マヤが寝巻きのままベッドで本を読んでいた。
「ただいま」
「おかえり」
ちらりといちべつすると、マヤは再び手元の本に目線を落とした。キツネの職探しには興味がないのだろうか。
「お金は手にはいった?」
「無理でした」
「ふぅん」
あいまいな返事を返す。
「そういえば、お金になりそうな話聞いたよ」
「何?」
「毎晩営業時間後に酒場の二階で何人か集まって、ひと勝負打つんだってさ。巻き上げられたって言ってるやつがいたよ」
「へぇ」
その話を聞くと、キツネの目が光った。金の匂いを嗅ぎ取ったのだ。
「誰に聞いた?」
「酒場で、立ち聞きした」
「そっか」
そう言いながらキツネが再び部屋の外に出ると、ちょっと待ってと言いながらマヤも着替えて外に出る。
「飲みに行くんじゃないぞ」
「わかってるよ」
昨日の今日で同じ過ちをおかすわけにはいかないだろう。昨日より重く感じる木の扉を両の手で開くと、昨日と同じように店主のおじさんが居た。
「こんにちは〜、とりあえずビール」
「はいよ!」
「キツネさん?」
「調査だよ、調査。まずは打ち解けないとな」
三人並んで座って昨日のようにビールを喉に流し込む。冷えていない、常温なのがまた良い。香りが引き立ついい塩梅なのだ。
度数の強いモノに手を出そうとするマヤを止めながら、だらだらと飲んでいると冒険者風の男たちが何人か二階に上がっていくのが見えた。その後に恰幅の良い男達も。
「始まったらしいな」
「そうだね」
「つついてみるか」
そういうとキツネは、ふらふらしながら酒場の主人に話しかけた。
「なぁ、マスター。この村にはさ、遊ぶところは無いのか?ほら、女じゃなくてさ」
主人は客商売とは思えない目つきでキツネのことを頭から尻尾の先まで見る。上から下へ、下から上に見た後に言った。
「博打はあるよ。遊んでいくかい?」
「良いね。案内してくれよ」
そう答えると、店の主人は三人を二階の小さな部屋に案内してくれたのだった。
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