第二十一話.新たな敵の攻撃か!?
朝。太陽がのぼり、樹海の中の集落にも光が降り注ぐ。水汲みをしているものの手桶の水面を、小さなお日様がゆらゆらと揺らめいている。くだんの三人は、それからしばらくして起き出してきた。
「頭痛い……」
「なんだ、お前もか。これは何者かの攻撃を受けている可能性があるな?」
「ありません」
少なくともルシアのそれは、第三者の攻撃ではなく二日酔いだろう。マヤはまだシーツにくるまったまま地面を転がっている。体毛に阻まれて顔色の窺えないキツネも何か不調そうな瞳をしている。
「とりあえず水を飲みましょう」
「そうだな……」
グラスの水をあおって一息つく。根本的な解決にはなるわけではないが、こんなものは対症療法を続けて耐えるしかない。
「まて、金がない。おかしいぞ……」
「お金が?」
「ああ、全然無い。すっからかんだ。何者かが俺たちを攻撃してきたついでに金を盗んでいったのか?いやまて、昨日の記憶もない。どうなってるんだ」
お金も記憶もない、それに頭痛がする。吐き気も。これはやはり。
「昨日、飲み過ぎたのでは」
「その可能性もあるな、それとも精神攻撃を得意とする魔物の攻撃か?」
魔物の攻撃の線は薄そうだ。
「ともかく、お金がないと困りますね」
「なんで無いんだろう……」
「昨日、あの後どうしたんでしたっけ」
「うっすら覚えているのは、ビールの後ワイン。そしてなんか最後の方でシャンパンを開けたような記憶がかすかに」
「そういえば、めちゃくちゃ高いシャンパンでお祭り騒ぎしてましたね。店主のおじさんも上着脱いで歌ってましたよ」
「いやーあれは楽しかったな」
彼はハッと何かに気がついた顔を見せる。
「だから金がないのか?」
「おそらく」
「待て、だがおかしいぞ。俺たちがそんな羽目の外し方をするだろうか」
うーんとキツネが目を閉じて上を向く。
「するよなぁ」
「しそうですね」
ともかく一文なしになってしまった。これでは集落を出発したくても、物資を調達するお金すらない。
「お金、稼がないと。嫌だけど仕事探さないといけないな」
キツネが一つぼやいた。どうやら冒険者達がどのように生計を立てているのか取材するチャンスが訪れたようだ。
「金をかりて逃げよう」
シーツにくるまった芋虫みたいな格好のまま、足元でマヤがそう言った。
「犯罪ですよ」
ルシアがそう言うと、マヤはシーツの中に潜り込んで頭も見えなくなってしまった。兎にも角にもしばらく集落に滞在して、お金の工面ができるようにしなければならなさそうだ。
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