第十三話.キツネの尻尾は何本?
ゴーレムの死骸、というかただの土の山に埋まっていた剣をキツネが掘り起こして回収する。人型に変身?した時は剣を使わなかったらしい。
「うーん」
ルシアは一つ頭を掻いた。後ろでゆった玉ねぎが左右に揺れる。魔物大百科をいくら調べても、キツネの尻尾が増えた魔物なんて載っていない。
「何してる?」
マヤが横から覗きこんでくる。
「いや、キツネさんの変身について調べようと思って」
「俺の話題?」
キツネも入ってきた。しかし何度ひいてみても尾が二つに増える魔物なんて載っていない。魔法の辞書も当たってみたが、同じように記載はなかった。
「でも何もわからなかったです」
「んー?」
「……」
ルシアが調べていた本の表紙を見てマヤがニヤニヤしている。キツネは無言だ。魔物大百科、古今東西のモンスターについて記述されている専門誌である。
「俺は魔物なんかじゃないよぉ」
「えっ!?」
違うんだ。てっきりモンスターだと思ったよ。じゃあ何って話なんだけど?
「キツネはね、昔は尻尾がもっと多かったんだって」
「まあな」
キツネがニッと笑みを見せる。自慢げな表情だ。尻尾の数が重要なんだ。
「人間に切られて減ったらしいよ、尻尾」
「まあな」
今度は尻尾を下に向けて、しゅんとした表情になった。尻尾の数が重要なんだ。
「尻尾の数が重要なんですね」
「重要っていうか、あるべきものが奪われてるって感じだね」
「だから私が増やしてやってる」
「助かってます」
マヤの主張に、キツネが大袈裟なジェスチャーで応える。
「なんで尻尾を斬られることになったんですか」
「さあ?イタズラしすぎたからかな」
一つしかない尻尾を右に左に振りながら、キツネは楽しそうに言う。虚空を見るその視線は、何事か古い記憶を辿っているようだ。
「結局いつの世も人間が強いんだよ。歴史が証明してる、化け物が人間に勝った試しがない」
「そんなものですか」
「そうだよ」
そういうものか。どう考えても君たちの方が力があるように思えるけど。筋力も、寿命も、魔法の力も人間種はどれも彼らのようにはいかない。
「とりあえずキツネさんは、今のところ魔物じゃないということで」
「まだ疑ってる!?」
兎にも角にもゴーレム撃破。黄金郷に向けて再び歩き始めたのだった。
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