第十四話.激突ポイズンスネーク!

ぐにっと音がした。キツネが叫び声を上げる。


「うわっ、やっちゃった」


彼の足元には黄緑の蛇。ポイズンスネークと呼ばれる毒のある蛇だった。ちょうど首根っこのあたりを踏みつけたようだ。足を動かすこともできずに、そのままの体勢で固まっている。ちょっとでも足を離すと、怒った蛇に咬まれてしまいそうだ。


「うわ」


マヤが眉間にシワを寄せて離れていく、とばっちりはゴメンだということだろう。ルシアはとりあえずカメラを取り出して、踏まれて怒っている蛇の顔を写真に収めた。


「……どうしよう?」


困った顔でキツネが情けない声をだす。三メートルほど離れてマヤとルシア。どうしようと言われても、どうしようもない。足を離せば終わり、地雷を踏んでしまった兵士のような感覚だろうか。


「ひょっとしたら、ゆっくり離れたら大丈夫かも。案外咬まれないかもしれませんよ」


無責任にルシアがそう言った。キツネが自らの足元をみると、シャーっと声が聞こえてきた。


「無理っぽい」

「確かに」


うーん。歴戦の冒険者にも恐れられるポイズンスネーク恐るべし。


「もう殺しちゃえば?」


そう言いながら、もう半歩マヤが離れていく。心の底から嫌そうな顔をしている。


「簡単に言うけどなぁ」


ポイズンスネークの血にも毒が含まれていて、それが皮膚にかかると危ない。何より問題なのが、その血がめっちゃ臭い。ルシアは同僚がこの蛇の肉で唐揚げを作っているのを見たことがある。まるでカメムシの親玉みたいな匂いがしばらく漂っていた。ちなみに肉を食べた彼はまだ入院中である。


「じゃあ足を離したら?」

「咬まれるし」

「じゃあ剣でもう殺しちゃいなよ」

「臭いもん……」


まさに究極の二択。引くも進むも地獄。


「殺さないように掴んで、その辺に捨てたらどうでしょう」

「おっ、いいアイデア!やってくれる?」

「……」


ルシアはジッとポイズンスネークの顔を見る。すごく顔が怖い。


「無理です、自分でやってください」


キツネがジッと足元の蛇を見る。マヤはさらにもう一歩後ろに下がった。覚悟を決めたようだ。尻尾を掴むとそのまま勢いで、ポイっと藪の中に捨てた。


「やった!」


晴やかな顔でキツネが言う。その手は少し紫色に濡れていた。


「あ……」


ポイズンスネークは毒を吐き出して飛ばすこともある。どうやら触ったタイミングで吐きかけられたらしい。


「痛!いたたたた!」

「臭い!くるな」


キツネがマヤを追いかける。マヤは走って逃げる。表情を見る限り本気で逃げているようだ。ちなみにポイズンスネークの毒はけっこう痛いが、食べない限り死ぬようなことはない。

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