第十二話.ゴーレム撃沈!大勝利!
どん!と一つ大きな音を立てて、砂煙が舞う。キツネとマヤはその爆心地にいる、姿は見えないがそこに居るはずだ。しかし土色の視界が晴れた時、そこには期待していたものは居なかった。
代わりにそこにいたのは、腰まで届くような髪に赤い瞳の人間だ。髪色は金とも銀ともとれる輝きを持ち、女性にも男性見える中性的な顔立ちの。ただ一つ不思議なのはキツネと同じ尻尾が二本、腰から生えているということか。それがどんなカラクリだろう、片手で巨大なゴーレムの拳を受け止めている。
「えっと、キツネさん?」
「そう」
気がつけばルシアのとなりにマヤがいた。仕事は終わったみたいな顔で横に並んでいる。
「あらよっと」
キツネだという人が透き通った声で掛け声をかけると、まるで重力が家出したかのようにゴーレムが簡単にひっくり返った。地響きを立てて尻餅をついている。
あらためてキツネの姿を見る。尻尾が増えてる。いやそれ以前に尻尾があるもののどっから見ても人間だ。けむくじゃらでもないし、肉球もない。顔もとんがっていない。色白で、すごい美人だ。女が見ても色気がある、紅の瞳には吸い込まれていきそう……。ふっとルシアの目の前が真っ暗になった。
「え!?」
「あんまりジッと見ないの」
後ろからマヤの声。どうやら目隠しをされているらしい。
「なに?なんですか?」
「魅了されちゃうよ。瞳を見ちゃダメ」
そう言うと目隠しを解いてくれた。
「キツネの尻尾を増やしたからね」
「どういう意味ですか」
「尻尾を二つに増やしたって意味だけど」
いや、言い方を変えてほしいんじゃなくて意味を聞いているんだけど。とりあえず何かわからないけどシャッターチャンスだ、カメラを構えていくらか写真を撮影する。
「終わった」
マヤはそう言った。そうこうしているうちにキツネがゴーレムに書き込まれた命令を見つけたらしい。逆さ吊りにしたそれの足の裏を指差している。青白く輝くなんらかのの文字のような記号の羅列があった。キツネがひゅうっと人差し指の爪で引っ掻くと、ゴーレムの動きは止まった。土人間は一瞬で土の塊になってその場に崩れて落ちた。その後、ふっとキツネの尻尾が一本消える。同時に人間の姿を見せていたものが、見慣れた獣の姿に戻ってしまった。
「おつかれ」
「お疲れさん」
当たり前のように合流してきたキツネが、マヤとハイタッチをしようとして無視されていた。あんまり残念そうな表情だったのでルシアが代わりにハイタッチをするのだった。
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