第7話
11月22日
店主、はまださんの話では『古本が売れるたびにSNSへアップしているわけじゃないんですよ。全部できたら良いのですが』というお話であった。
それでも当初のイメージでは数時間に一冊、棚子さんの古本が出ていくものではないのか、と思っていた。
鍛冶六さんで古本の棚主になり、今まで考えなかったようなことを考えるようになった。
自分はもしかしたら、世間一般よりも相当な本好きなのではないか。それは価格にも影響していると思った。
愛着がありすぎて、相当頑張った値付けでも、世間一般の目から見れば、まだまだ高い、ということなのではないか。付けた基準は『自分が古本屋さんでこの価格を見たら、ワオと言って速攻買うよね』という値付けである。
あと、ライバルはブック◯フということ。あそこの最低価格は110円くらいである。あの大手と戦うには、80円とか90円とか、あの店では見ない値段で攻めて行く、最低価格、というこちらの常識を、バンバン崩さなければいけないのではないか、などと思ったりした。
先日、本屋でみうらじゅん著『ない仕事の作り方』という本を買って今読んでいる最中なのだが、これがまた爆笑もので、マイブームの火付け役の人の本である。
基本、自分を洗脳し、とことん好きになる、らしい。それが伝わるのだな、と思わせる内容だった。
全国で天狗に関するグッズを収集し出し、鼻の長さを計測して、ロンゲスト・ノウズを決めようとしたり、もうその時点で十分に面白いし、引き込まれている。
こういう本人が最高にノリノリで楽しんでいる様子は、きっと隣の人も巻き込んで楽しませるものなのではないか、と思ったのだ。
この棚子で生活していかねばならないのなら、売れないことに悲壮感漂っても仕方がないが、娯楽、レジャーである。やはり楽しんで取り組まねばならない。
今は楽しい。あとはどうやって形にしていくか、だ。
そしてまた起業家のハウツー本に手を伸ばす。
【06 商売は片手が必要】
これはタイトルで意味が読み取れなかった。内容は、妄想や頭の中だけで作った商売はするな、ということ。
実際の商品が完成している、もしくは必要としているお客さんがいる、このどちらかが実際にないと、商売はお話にならない、ということだった。
この筆者は企業相談も受けていて『これこれ、こういうラーメンは売れると思うんですよ』『で実際にその具材で作ってみたんですか?』『いいえ、頭の中だけでして』そういう相談者には帰ってもらっているそうだ。
やはりイメージだけではなく、実際に本、これを作って展開していきたい。オリジナルのZINの制作である。それを古本の隣に並べる。
それには印刷に回して、そういった勉強もしなければならない。出すのなら大好きな探偵小説関連のZINを作りたい。そのようなスキルは現段階で全くない。
自分が出す本は、自分が一番欲しいから、自分で作る。この方針で行こうと思う。
五十を過ぎると、同年代の人が、これは実際に私の身の回りにいる人々なのだが『建築の方で独立して、ある程度成功しました。セルシオ乗ってます。妻にこの度、夢だった飲食店を資金援助してオープンさせました』とか『経営している飲食店が好評で、姉妹店もできました。ハーレー乗ってます』みたいなことをサラッと言われたりすると、あぁ、自分はここまで呆けておったなぁ、全然ダメだなぁ。みたいに感じたりする。
その点、幼馴染の漫画家、相棒の金平は『他者との比較なんてナンセンス、大事なのは自分に向き合うことよ』と達観したことを言うのだが、私はまだアイツほど煩悩が抜けきれておらず、結構しょんぼりしてしまうのである。
それはセルシオに乗れなくてもいいや、とか、自分の飲食店なんていらないや、というのが強がりに聞こえたりするところから来るもので、でも実際に手にしたらどうだろう、と思うと、やはりそれほど両者に執着はなく、心の落とし所としては、やはり今が楽しい、と思えれば、それは私の幸せだろう、というのが真理なのだろう。自分を楽しい状態に持っていくことが大事で、他者と自分の生活を比較する事自体ナンセンスなのだ、と思うようにしたほうがいい。
そう思えば、心はもう、自分の棚を、今後さらにどうやって改造しよう、みたいなことで満たされていくのであった。
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