第5話

ルイ・ナカムラが亡くなったという現場。つまり、ルイ・ナカムラの自宅の住所を調べるのに、さほど時間はかからなかった。ネットの住人たちが、熱心に調査し、アップしていたからだ。あとは、其処に向かうだけだった。

電車で二駅。ルイ・ナカムラの住んでいたというマンションは、どこにでもありそうな見た目の、七階建ての普通の建物だった。エントランスに入り、郵便受けを確認する。驚いたことに、ルイ・ナカムラは本名だったというのだ。

改めて空虚な思いが浮かぶ。水樹は、大嫌いだったルイ・ナカムラの素性なんて、何も知らないのに、大嫌いだったわけだ。

「五〇一号室ですね」

エレベーターに乗り込んで、五階のボタンを押す。

理人が最初に五階で降り、次に陽希、水樹は少しだけ足を引き摺りながら後に続いた。

「ここですね」

理人はインターホンを押した。ピンポーンと、ありふれた音が響く。誰かが出て来るはずはない。ルイ・ナカムラは一人暮らしで、この部屋で殺されたのだから。さあどうするのかと思ったら、理人はドアノブに手をかけた。

「鍵はかかっていないのですね」

「無用心な奴だなぁ」

陽希が言う。理人は苦笑いをして、扉を開いた。

「お邪魔いたします」

「失礼いたしまーす」

「……失礼いたします」

理人、陽希、水樹が順に入ると、理人が振り返った。

「水樹。私は貴方を信頼しておりますが、万が一、危険を感じた場合は、決して無理をせずに逃げるように。いいですね?」

「承知しました。理人こそ、気をつけてください。お前が怪我をしたりしたら、それこそ、陽希が悲しみますから」

理人は、一瞬きょとんとした顔をしてから、「えぇ」と微笑んだ。水樹も心配してはいただ、お高く留まっている理人に、言ってやるのも癪だったのだ。

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