第4話

此処からしばらくの文章は、あくまで、ネットニュースで、陽希が読んだ限りの情報だ。ルイ・ナカムラは、自宅の寝室で殺害されていた――らしい。猟銃で一発、胸をズドン。凶器は持ち去られていたとか。

小説は予約投稿で書かれており、先ず、その被害者=ネット小説で有名なルイ・ナカムラであるということが分かるまでに、時間を要した。つまりは、ネットニュースになった時には、とっくに、ルイ・ナカムラは亡くなっていたわけだ。

陽希の落ち込みようは、ひどいものだった。思っていたよりもずっと。ソファにぐったりと横たわり、何もしなくなってしまった。いや、元々依頼がなく、そうでなくても遅刻魔であり、ほとんど何もしなかったのだが。

だから実質的に、水樹はと言えば何も困らなかった――ルイ・ナカムラが亡くなって、水樹の小説の順位が上がるということはなかったけれど。同時に困ることもなかった。めぼしい依頼が舞い込むということもなかったし。何も変わらなかった、との表現の方が、近いかもしれないが。

しかし、理人がとても、落ち込んでいたのが気になった。ネット小説など、書いたことも読んだこともないのに。額を押さえて動かなくなる時間が増えた。

「どうしたのです、体調でも悪いのですか」

流石の水樹も不安になって、問いかける。

「陽希の元気のなさが心配で元気がなくなってしまいました」

「そんなバカな」

「水樹。私から一つ依頼をしてもよろしいですか」

唾を飲んで理人の顔を見ると、理人は真剣な顔で胸に手を当てて言った。

「ルイ・ナカムラを殺害した犯人を、見つけてください。陽希のために」

「それは……」

「勿論、報酬は私からきっちりとお支払いを致します。依頼着手料の平均、百万円を先ずは、振り込ませていただきますね」

「いえいえいえいえ流石に、其処までは結構」

水樹は激しく首を左右に振り、それから穏やかな笑みを作った。

「ほんの、平均成功報酬の二百万円だけで構いませんよ」

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