11:必死になる理由

 走る。ただ、ひたすら走っている。

 あいつと一緒に病院までの道を。


 さっきと同じことを思う。

 どうしてこんなに必死になってるのか。

 大の為に必死になってるのか。


 でも、本当は気付いてた。


 あたしは、あいつが、好きなんだ。


 いつの間に好きになったんだろ?


 恋なんて縁のないものだと思ってたのに。


 振り返ってあいつがいるかどうか確かめる。


 大丈夫。あいつはちゃんといる。


 好きだって、はっきりと自覚したから、


 たから、


「……あのさ、大……」


 立ち止まって、声をかけてみたけど言葉なんて思いつかない。


 だけど何か言いたかった。


 何かを話したかった。


 ただ、それだけで。


「…………大?」


 振り返る。


「……どうして……なん、で……」


 そこには誰もいなくて。

 大はいなくて。


 あたしの目から涙がこぼれてく。


 初めて、泣いた。


 物心ついてから、初めて。


 それから、あたしは、

 「馬鹿」って言葉を、

 何度も何度も、繰り返してた。

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