05:あいつに振り回されてる!?
「はぁッ、はッ……あーっ! 間に合ったぁ!」
良かった……! 本当に良かった!
なんとか塾に間に合ったー!
塾の先生、めちゃくちゃ恐いのよね。
間に合わなかったらどうしようかと。
でも、いつものことだけど思う。
塾ってつまんないとこだなって。
勉強、勉強、勉強ばっかり。
それに――何人かの友達は良いんだけどね。
それ以外の人は勉強が全てなんだなって。
机に張り付いてひたすら問題を解いて、
自分は勉強以外のことなんてする暇はないんだって雰囲気が伝わってくる。
ここはそんな場所だから仕方ないんだと思う。
でも、少しだけ。ほんの少しだけ寂しい。
こことは雰囲気が違う塾もあるのかもしれない。でも、あたしの通ってるとこはこんな感じだった。
勉強が大事なのは分かるけど。
ここにいると勉強の為だけに生きてるような。
そんな気持ちになっちゃって、ちょっとだけ気分が沈む。
すごい馬鹿だったけど、まだあいつの方が……、大の方がなんか良いなって思える。
あいつは馬鹿っぽいけどさ。
ここにいる一部の奴等よりはマシだなって。
だって、あいつは笑うことができてたから。
って、やだ!
なんで、あいつのこと思い出してんの!?
でも、ここに来てみて。
塾に間に合ったことで落ち着いて、
それから改めて思ったの。
もう一回くらいあいつと話したいなって。
って、もう一回ね、もう一回。
二度も三度も会いたいなんて思わないって。
だいたい自分が死んでるとかあたしが死んでるとかさぁ、そんなこと言ってくる奴よ?
一回会えばじゅーぶん。
って。
普通なら一回でも会いたくないか。
こんな言い方したらあたしが普通じゃないみたいじゃない!? 違う! あたしは、普通、普通だから!
…………あれ?
今、誰かが私の肩を叩いたような?
「げッ……」
「ちゃんと先生の話を聞いているのかな?」
その後あたしは笑顔を崩さないまま静かに怒る先生に数学の問題を十問、特別に出して貰った。
いらない。こんなのいらない……。
考えごとしてたあたしも悪いんだけど出された問題が全部難しいやつばっか!
こんなの解けるわけないって。
帰り誰かに教えてもらうかなぁ。
うーん、なんかあたし、あいつに……大に振り回されてない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます