04:勝手に呼ばないで!
『……ッ!? あぁッ!』
二人の声が重なった。
あたしと大のだ。
何があったかって?
今さっきそこの角を曲がろうとしたら偶然会っちゃって……最悪よね。
おかげでこっちはすっごい嫌な気分だってのにあいつったら。
「あはははは、また会ったなぁ、空」
ってへらへら嬉しそうに笑うのよ? 信じられる?
人の気も知らずにどこまでも無神経な奴だわ。
「なななな、なんであんた、ここにいるのよ?」
予想外のことに、あたしってばめちゃくちゃ混乱しちゃって情けない。
「空こそどーしたんだよ。いきなり走っていったかと思えばまた戻ってきて」
まあ、そうよね……。そう思うわよね。
あたし塾に行く途中でこいつに会ったんだってことを思い出して引き返してから数分もたってないんだし。
もっかいこいつと会ってもおかしくないか。
「別にちょっと用事を思い出しただけ! あんたには関係ないでしょ!?」
「うわぁ、ひでぇ言い方するなぁ」
……? そういえは、さっき、こいつ!
「あっ、あ! あーッ!」
「何だよ、急に叫んで」
そ、そりゃ叫びたくもなるわよッ!
「ちょっと待って、あんた今、あたしのこと名前で呼んだでしょ!?」
ってあたしが言ったらムスって不機嫌になっちゃって、
「呼んだけど、別に良いだろ?」
だって!
「良くない! 絶対、良くない!」
「なんでだよ」
ちょっと考えれば分かるでしょ?
「なんででも! 駄目なものは駄目! 誰かに誤解されたらどうすんのよ?」
こんな奴と知り合いなんて誰かに知れたりしたら、あたし恥ずかしくて外歩けなくなるじゃない。
「は? 誤解? あ、俺達が付き合ってるとか? そーいう? 大丈夫だって」
そこは分かってるんだ? ……ん? あ、また言ってる!
生きてる奴らにはあたし達の姿が見えないんだって。
やっぱり、こいつ危ない奴だ。
「だから、あたしもあんたも生きてる人間なの! 死んでないの!」
何度も何度も、何度も、言ってるのに、
「お前、分かってないなぁ。俺達は死んでるんだって」
だってさ。もう付き合いきれないわよ、こんなバカ。
「…………」
……もう、付き合いきれない。
「あぁッ!? こんな事してる場合じゃないんだって! あんたの相手してる暇ないの!」
「おい、何処行くんだよ」
だから! あたし塾に行くんだって!
ったく、あいつのせいでまた無駄な時間食っちゃった!
あぁ、もう。急がないと本当に遅れる。
今度こそ、今度こそ、もう二度とあいつに会いませんように。
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