第9話

 朝、帝都の外周を走り汗を流す。

 毎日走れば、スタミナ増強にそれなりの効果があるはずだ。


「今日で泊まり込みでの採集は最後になるかな。」

 寒さが厳しくなり、森での野営をするのは今日が最後になると思う。やろうと思えばもう少しは出来るんだろうけど、それなりの用意をする時間が足りない。


「今から森に入りますね~」

 いつものように狩猟小屋に一声かけて森に入る。


「この前と同じように洞窟を目指すか。」

 洞窟周辺で野営して、洞窟を中心に採集をする計画を立てる。


「あ、これはウムドの足跡か。」

 洞窟に向かうとウムドの足跡を複数見つける。

「これは、洞窟に向かってると考えた方が良いよなぁ。あそこで冬眠すると聞いてるし。」


 1頭だけなら、不意を突けばなんとかなると思うが、複数いると流石に対処が難しい。


「どうしたものか。洞窟に近づくのは流石に難しいよなぁ。かと言って、採集している量が全然足りないよなぁ。」


 足跡の付近を他の痕跡が無いか探しながら、今後の予定を考える。


「今回は、野営を諦めて、浅い所で採集して帰るか。」

 森の浅い所で薬草を集めて森を出る。


「おう、野営する予定じゃなかったのか?」

「野営しようと思ったんですが、ウムドの足跡が結構見つかって、野営を諦めて帰って来ました。また、明日来ます。」

「まぁ、安全第一ってことだな。それで足跡はどの辺にあった?」


 狩猟小屋に顔を出し、ウムドの痕跡を見つけた場所を報告する。

「思ったより、街の近くだな。」

「あぁ、だから奥に行かずに帰って来たよ。」

「よかったら狩りに行かないか?ここにいる人間が全員参加すれば、安全に狩れるはずだ。」

「これから行くのかい?」

「あぁ、ウムドは積極的に狩らないと、なかなか遭遇しない上に出会った時の被害が大きいからな。」

「分かった。参加するよ。」

 ロバートが狩猟小屋にいる猟師全員に声をかけ、ウムド狩りに出る事となった。


「2~3人でグループを組んで行動するように。決して単独行動をとるなよ。」

「分かったよ。」

「複数人であたれば、何とかなるからな。」


 森に入り、痕跡を見つけた場所に到着する。

「なるほどな。確かに複数頭いるな。これなら引き返してきて正解だったぞ。」


 痕跡をたどり、ウムドを探す。


「いた。2頭だ。」

「どうする?」

「両方とも狩るぞ。一斉に頭を狙って矢を放って、目を潰すことを優先しろ。」


 風向きに注意しウムドを半包囲する。

「今だ!!」

 一斉に矢を放つ。


 1頭の目を潰すことができたが、もう1頭は顔に矢がささる。

「片方だけでも潰せただけで上出来だ。爪に気を付けろよ。」


 前回の遭遇と違い、仲間がいるだけで心強い。手にした鉄棒で無傷のウムドの頭を狙う。爪で払われそうになるが木の棒と違い折られる事は無い。何度か頭や腕を狙い棒を振り下ろす。1頭の注意を引き付けているうちにもう1頭は猟師たちが片付けたらしい。


 ウムドの背後からリーグが頭へ一撃を入れ、ウムドが倒れる。


「よくやったな。」

「今回は、仲間がいたから何とかなったよ。」

ウムドに1対1でやり合えるだけ凄いよ。」

 お互い、声をかけ、無事に狩りが終わった事に安堵する。


「さて、運んで解体するか。」


 狩猟小屋に2頭を運び解体を行う。


「そうだ、内臓を持っていくか? 薬になるぞ。」

「助かるよ。良い土産になりそうだ。」


 猟師たちに別れを告げ、サラの店を目指す。


「おや、どうしたんだい?今日は野営の予定じゃなかったかい?」

「あぁ、野営するつもりだったんだけど、森の浅い所でウムドの痕跡を見つけてさ。奥に行くのを諦めて、日帰りで採集する事にしたんだよ。」

「なるほどね。」

「で、狩猟小屋に寄ったら、猟師たちと一緒にウムド狩りに行くことになって、頑張ってきた。」

「無理はしなかっただろうね。」

「あぁ、前回より余裕があったよ。仲間がいるのは良いね。」

「そうかい。」

「そうそう、ウムドの心臓・肝臓・腎臓・脳・眼球を猟師から持たされたよ。もちろん肉もあるよ。」

「それは助かるよ。内臓は薬に使えるからね。たまに猟師が持ってきてくれるんだけど、ちょうど在庫が切れそうだったから助かるよ。」

 サラに内臓を渡し、肉を分けて長屋に戻る。


 長屋に戻り、煙草に火を付ける。

「今回は、ロバート達がいたから余裕を持ってウムドの相手ができたな。」

 コーヒーを用意しながら、一人反省会を始める。

「手甲と革鎧のお世話にはならなかったけど、鉄の棒に変えておいて良かったと思う場面は多かったな。」

 前回と違い、ウムドに一撃喰らわされる事は無かったので、怪我はなかった。武器の棒も折られる事なく、有効打を入れられた。

「やっぱり弓の練習もしないといけないな。」

 今回は外さなかったが、緊張状態で狙いを付けるのは難しかった。


「やっぱり、脚絆もあった方がよさげだったな。」

 前回見送った部位の購入を考える。コーヒーを飲み終え、反省会を終わる。



「カレンいるか?」

「は~い。」


 カレンの部屋を訪ねる。

ウムドの肉が手に入ったから、お裾分けだ。」

「ありがとう~。今回は怪我してないよね。」

「あぁ、猟師たちと一緒に狩ったから怪我はないよ」

「良かった~。そうそう、「明日、語学学校の最終試験だから結果が分かったら教えるね。」

「分かった。合格したらお祝いに行こうか。」

「えぇ、また。」


 自室に戻り、また煙草に火を付ける。

「初級調薬師試験の勉強でもするか。」

 近々受験する予定にしているので試験勉強を始める。こんなに真面目に勉強するのは学生時代以来だ。

「一発合格出来れば良いが。」

 合格率は高いらしいので、余程の事が無い限りは合格するだろう。ただ、油断は大敵だ。最後まで手を抜かずに頑張ろう。

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