第7話

 朝から、パイプに煙草を詰め、一服する。

「さて、今日は休息日にしてるんだけど、何をしようかな。」

 2日間森行き、2日間街暮らし、1日完全休養日の生活を続けている。今日は完全休養日になる。


「アランさ~ん。勉強を見てください。」

 Tera語の補習の約束をしていたカレンがドアを叩く。

「ドアは開いてるから入って来いよ。」

「おじゃまします。」


 カレンが教材を片手に部屋に入って来る。

「今日はこの部分を教えてください。」

 勉強を見ながら、道具の手入れをする。


「これ、何に使うんですか?」

 ファイヤーピストンを手にカレンが聞く。

「火種を作るときに使うんだよ。」

「どうやって使うの?」

「中に火種になりそうな物を入れて、ピストンを押す。そうすれば火種に火が付くんだよ。」

「へー、便利ですね。」

「まぁ、野営する時にあれば便利だよ。簡単に作れるから、カレンにも作ってあげようか?」

「はい。ありがとうございます。」


 カレンが勉強を進める横で、ファイヤーピストンを作る。

「簡単に作れるんですね。」

「簡単に作れる割に便利なんだよね~。」

 煙草の火種を作るために部屋用と小型の奴も併せて3つ作る。

「はい、完成。これを持っていきな。」


 次は砥石を持ち出し、解体用の道具と鉈を研ぐ。

「たくさんナイフがありますね。」

「動物の解体に使うからね。」

「解体できるんですか?」

「一応覚えたけど、動物の狩りに行かないから実際に解体をしたのは数回かな。普段は薬草採集がメインだからね。狩りのやり方は動物に遭遇しないために使ってるところもある。」

「そうなんですね。」

「まぁ、それでもウムドに鉢合わせして怪我したんだけどね。」

「そういえば、この前怪我してましたね。あれはウムドにやられたんですか?」

「あぁ、森の中で逃げられなくてね。何とか仕留めたんだけど、怪我しちゃって。」

「無事でよかったです。」


「また、よろしくお願いしますね~」

 復習・予習も終わり、カレンは部屋に帰る。



 歩数計をいじりながら煙草を一服。

「あとは、一歩でどれだけ進むかを計っておかないとなぁ。巻き尺と製図道具を買っておかないと。」


 一歩あたりの距離が分かれば、歩数計が計ってくれる歩数と掛け合わせることで大まかな距離が分かる。距離が分かれば地図を作りやすくなる。


「まぁ、地図作成のスキルは冬の間に伸ばす予定だし、残りのカンテラと懐中時計も買えるようにしないとな。」


 翌日、狩猟小屋に声をかけて、森の中へ。

「今回は洞窟の入口まで一気に行って、入り口周辺に拠点を置いて採集をするか。」

 欲しい物の多くは洞窟の中で採れるし、洞窟までの行き来で幾つかの薬草も確保できる。


「いま、しっかりとした拠点を築いても、冬でダメになるだろうから、簡易拠点を整備しておこう。どうせあと数回はここに来ることになるんだから。」


 周辺から木を集め、枝を払って柱を立てる。下草を刈り、拠点へ運ぶ。

「風除けができればいいんだし、これで良いか。」


 洞窟の周辺で軽く採集を行い、夜を迎える。


「さて、今日は洞窟の中で採集して森を出ますか。」

 洞窟の中でキノコと苔を集める。


「洞窟の中は意外と暖かいんだな。冬眠に使う動物が出るのも頷ける。」

「動物の足跡はないから、まだ大丈夫だと思うが、少し警戒度を上げておこう。この前の二の舞は避けたいし。」


「奥に行こうと思うと照明がいるな。松明よりカンテラの方が良いよなぁ。ガスは出てないと思うけど、可燃ガスが出てたらそこで終わるし。流石にカナリアを連れてくる訳には行かんし。」


 地図を作る事を考えると色々と欲しいものが増える。ただ、レポートを分館に出すってのをやってみたいし、この冬にしっかり準備をしよう。


「さて、そろそろ帰るか。」


 狩猟小屋に一声かける。

「冬の終わりにヘクー鹿パーリオイノシシを間引くんだが、アランも参加するか?」

 ロバートから声をかけられる。

「間引くんですか?」

「そう。冬の終わりに一定数間引いておかないと春になり子供が生まれると森が荒れる事になるんだよ。2週間ほど狩りを続けるから、何回か狩りに出てくれれば助かる。」

「分かりました。狩りの腕を上げるいい機会になりそうなんで、参加します。」

「助かるよ。時期が来たらまた声をかけるよ。」


 ロバート達に別れを告げ、街に帰る。


「今回の採集物を持ってきたよ。」

 サラの店に顔を出す。

「あぁ助かるよ。結構採ってきたんだね。」

「今回は洞窟まで一気に行って、入り口近くで野営したから、洞窟で採集する時間が長めにとれたからね。」

「なるほど。」


 冬の終わりにヘクー鹿パーリオイノシシの間引き猟に誘われた事を話すと

「それだったら、ヘクー鹿の角を貰ってきてくれないか。あれも薬に使えるんだよ。」

「分かったよ。頑張ってヘクー鹿を狩って、角を貰えそうだったらもらってくる。」

「猟師たちも薬になる事を知ってるから、私の名前を出せば分けてくれると思うよ。」

「なら、分けてもらえそうだな。」


 サラの店を出て長屋に帰る。


 パイプに煙草を詰め、火を付ける

「そういえば、ライターはあるのかな。機巧師組合の売店を覗いた時に探せばよかった。まぁ、無いとしてもオイルライターだったら作ってもらうのもありだな。」

 現実世界では某有名オイルライターを愛用しているが、何度もメンテナンスを繰り返すうちに機構は頭に入っている。


「まぁ、機巧師組合に行ってから考えるか。」

 ライターがあれば、火種の確保に選択肢が増えるから良いんだけれど…。


 翌日、機巧師組合の売店を覗いてみたが、使い勝手の良さそうなライターは無かった。


「小物の細工が上手い機巧師ですか?」

 組合の受付に機巧師を紹介してもらえないか聞いてみる。

「どう言ったものを依頼されるのでしょう?」

 ざっくりと仕様を書き出すと

「それなら、クロウさんが得意かもしれません。」

「なら、クロウの店を教えてくれないか?」

「こちらになります。」


 受付に礼を言い、クロウの店を目指す。

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