第8話 資本主義の分断はシステム思考で包括したいと思わない?

太郎「複利って怖いな」

ボブ「リボ払いの話?」

太郎「それも怖いけど、5%の年利を10年運用すると1.6倍、40年で7倍に増えるだろ」


ボブ「ごめん、Bardで検算してもいい?」

太郎「『Pythonで計算して』と頼めば、BingもBardもコード書いてくれるよ。ChatGPT Plusなら、グラフも作成できて便利だよ」


ボブ「情報が多い」


太郎「でね、資本主義は本質的に、複利で資本が増えるから、格差が開くよね」

ボブ「複利、ほんと怖ええなぁ」

太郎「しかも、富の分配を確認すると、上位1%と下位50%が酷いことになっている」


ボブ「Bingが教えてくれたけど、知りたくなかった!!!」


太郎「『銃・病原菌・鉄』読んだ?」

ボブ「ユーラシア大陸が有利な話だろ」

太郎「いつの時代にどの地域に、どの親で、どんな遺伝的なリスクを持って生まれるか選択できる?」

ボブ「出来ることを科学的に証明してはいないはず」


太郎「経営や投資で、本人の努力以外に、人との出会いなど幸運が作用してるよね」

ボブ「否定できない」


太郎「功利主義って、『最大多数の最大幸福』を重視するよね。いかなるマイノリティも尊重するし、マイノリティも含めた最大多数の最大幸福だとするじゃん」

ボブ「うん」

太郎「たくさん納税できる『プレーヤー・選手』を増やせるといえないかな」


ボブ「上位1%が圧倒的に勝つのではなく、社会で力を発揮出来る人々を増やせるなら、そうだね。でも、お手本になるロールモデルが少ない」


太郎「帰納法で考えよう。無数のカラスを観察して、共通パターンを抜き出して、カラスは黒いと考える推論のこと」

ボブ「知ってる」

太郎「無数の成功者を分析すると、大多数は、逆境の方も含めて、家庭教育と初等教育の機会が壊されずに、高等教育を受けられた可能性があると、パターン、つまり共通点が出るはずだ」

ボブ「何らかの専門性を持っているから、その出方はあるかもしれないね」


太郎「なら演繹法だとどうかな。『人は何らかの教育により専門性を獲得する』『アイザック・アシモフは人だ』『アイザックアシモフは何らかの教育により専門性を獲得する』と、三段論法で推論出来る」


ボブ「Wikipediaを確認したけど『家庭は裕福ではなかったが学業成績は優秀で、公立校や高校を飛び級で卒業して1935年に15歳でコロンビア大学へ入学した』とあるから、確かに教育を受けている」


太郎「なら、アブダクションも試そうか。『窓ガラスが割れている。石が落ちている。一番うまく説明できる仮説は、石が窓を割ったこと』ってやつ。『経営者は機会損失を嫌う。格差は競争をすれば生まれる。資本主義は資本自体も複利で増えるから格差は自然に広がる。だから、経営者は機会損失を防ぐために、資本主義に最適化する」

ボブ「世界の大半の地域に貧困があるのは、潜在的な人材を捨てているから、機会損失だろ。そのアブダクションは変だと思う」


太郎「でも、現状はこうだろ。なら、どうする?」

ボブ「システム思考でいこう」


太郎「いいね、どうやる」

ボブ「世界を複雑なシステムだと見て、相互に関係し合うことも想定する。すごく抽象化すると、現在の資本主義は『富の再分配』の機能不全が起きている」

太郎「そうともいえるね」

ボブ「可能な限りどの環境でも、アタッチメントを大切にして、家庭教育や初等教育という、その方のOS自体の前提をきちんと育てる」


太郎「世界先最高峰の大学院博士課程であれ、私大の医学部であれ、無償化するのは賛成する。けど、財源どうするの?」


ボブ「システムだと言っただろ。現在の資本主義のルールで一番強いのは誰?」

太郎「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの総称)などの大手IT企業や大富豪、投資家かなぁ?」

ボブ「考えよう。資本主義のルールで競争することは彼らが一番得意なのだから、世界最高峰の人材との優先的な交渉権と引き換えに、財源生み出して貰えばいい」


太郎「詳しく」


ボブ「複利の効果を得るには、資金の大きさと時間が必要だよね」

太郎「そうだね」


ボブ「なら、その方の利益ではなく、複利で増えた資産の1%を寄付してもらう。次に、優れた投資家が、『教育の原資ファンド』を専門知識で運用する。これは、専門的な労働だから、きちんと報酬を出す。このファンドは、GAFAや大富豪や投資家が厳しい目で見守るから、安定して結果を出す可能性が高い。一定の金額を、教育を受けたい人々に与える。再分配したよね?」

太郎「机上の空論として、聞いたよ」


ボブ「世界の見捨てられた人々の中から、一定の確率で、ものすごい才能が現れる。優先的な交渉権は?」

太郎「GAFAとか大富豪とか投資家」


ボブ「あくまでも交渉権だから、教育を受けた人々が、国に帰って教育に取り組むとか、リーダーになるなど、地域への再分配の可能性もあるよね? あくまでも本人の意思、本人の人生」


太郎「抽象的な戦略を、具体的な戦術に落とし込んだね。ところで、過労で倒れたり、事故で障害を負ったらどうする?」


ボブ「何らかの専門性を持っていたと仮定するよ。これまでの会話を前提にして」

太郎「いいよ」

ボブ「LLM(大規模言語モデル)などの技術で、その方の困難を支援して、いかに単純作業ではなく、専門性を活かせるかと、支援体制を体系化する」

太郎「具体的に」


ボブ「例えば、星野富弘氏のように、体の自由が効かないとする。絵や言葉で、詩画集を生み出した方だけど、いつか筋力が衰えて、描けない日が来たとする」

太郎「うん」

ボブ「現在の画像生成AIは、審美眼が未成熟だし、意図しない画像ができたりもする。そこで、星野富弘氏のような、審美眼という専門性で『違う』『それでいいから続けて』と伝えたら、画像生成AIの苦手なことを支援してもらえる」

太郎「なるほど」


ボブ「煎じ詰めると、LLMは人と異なる知性だから盲点も人と異なる。だから、補い合える。補い合うなら、専門性のある目で見ることが望ましい」


太郎「アブダクションの『石が落ちている。一番うまく説明できる仮説は、石が窓を割ったこと』という話に戻ると、格差の増大を見過ごすことは、最大の機会損失の可能性があるという『石』に相当する前提を、資本主義で結果を出した人々は見えていない可能性があるね」


ボブ「お互いに盲点を補い合うことは、システム思考で、複雑なシステムの全体を考えると、より重要になるね」


太郎「教育を少し具体化すると、グローバリズムで個人や地域の文化や歴史が均一になってはいけないから、様々な背景を尊重したいね」

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