第36話

「言語中枢の破壊による

殺人だとアンタはいったね」

十文字が監察医に質問した。

「そうだ」

「そんなことがありえるのかね」

「わしも驚いた」

監察医が長い顎髭をさすった。

「しかし、そうとしか説明のしようがない

んじゃ」

監察医も当惑顔だ。

「医学や科学の常識では計り知れん

ことが、この世にはまだまだある」

「アンタの知識不足だという線も」

「失礼な」

監察医が顔を真っ赤にして怒った。

「わしを誰だと思っておるんじゃ。この

道一筋五十年の」

「わかった、わかった」

十文字が適当にあしらった。

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