第35話

「大丈夫か,言葉」

実葉が言葉に優しい言葉を掛けた。

それは、実葉がめったに見せない

他人への一面でもあった。

「大丈夫、少し歩くペースを

緩めてもらえませんか」

言葉にしても一体、実葉がどこに

向かっているのか知りたい所ではあった。

「ねぇ、実葉さん、一体、どこを

目指していらっしゃるの」

「御嶽山のふもと、無自戒とも

約束は交わしてある」

「その、無自戒って方は」

「敵ですよ。強烈な敵」

実葉の両目がギラリと凄み

を増して光った。

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