第32話
牢屋の中で無自戒は
卵を壁にぶつけていた。
ペシャン、ペシャン。
卵は壁に当たるたびに、
微かな破裂音を出し、
ゼリー状の白身や黄身と
ともに、潰れて行った。
無自戒はその動作を
延々と何度も繰り返し、
消沈の中に埋もれて行った。
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