第21話

「これは鬼神の仕業か」

警視庁捜査一課の刑事、十文字幸太郎

は世路山毛欅村の惨場を目の当たりに

して、言葉を失った。

「この有様ですだ、刑事さま」

村人が力なく首を振りながら

十文字に告げた。

「何か、犯人に心当たりは」

十文字がそうたずねると、

「いや」

村人は短くそうとだけ

返事を返した。

「「あ」をいただいたとだけ言い残して

去って行きました」

「「あ」を」

十文字も首を捻った。

「何者の仕業でしょうか、刑事様」

「いや、それは私にもわからんが」

十文字は困惑の表情を浮かべた。

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