第18話

「今、「う」が盗まれた」

無自戒が一刀斎に言った。

「本当か」

「 む」

「うむ、とそう言ったんだな」

「そ だ」

「そうか」

一刀斎は何か気の毒なものでも眺めるように

無自戒を見た。

「今度は「う」か」

「これで済めば、まだいいが」

無自戒は覚悟を決めたと思っていた。

しかし、いざ、言葉を失ってみると

その喪失感は予想を遙に上回るものだった。


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