第16話
「また、したな」
長兵衛が鎌三に別れの挨拶をした。
「今、なんていった」
「また、明日っていったんだ」
「「あ」がきこえなかったぞ」
鎌三が耳を欹てた。
「まあ、 だろう」
「今、なんていった」
「まあ、いいだろうっていったんだ」
「「いい」が聴こえなかったぞ」
「オマエ、耳が遠くなったんじゃないのか」
「そんなはずはないさ」
鎌三が納得がいかずクビを盛んに
捻った。
無自戒は少し離れた場所から
この二人のやりとりを眺めていた。
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