第6話
「 りがとう」
そう言ってから、実葉は何か
重大なことに思い当たったように
ハッとして、持っていたコーヒーカップを
落としそうになった。
「どうかしたんですか?」
言葉が心配そうに聴いてきた。
「ありがとうもうまく言えなくなってきている、
ともかく、急がないと」
「「あ」を盗み出すんですね」
「そうだ、手伝ってくれるか」
「死せば諸ともですわ」
「そうか、じゃあ無自戒正午を
退治に行こう」
「ハイ」
それ以来、図書室に二人の姿が
見えることはなかった。
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