第11話 試し斬り

 「……んぅ」

「お、ロリちゃん起きた?」


 「もう1時間経ちましたか?」

「もう1時間半経ってるよ」

「ふぇっ!?」

「……んふふっ」

「お姉ちゃん、笑わないでよぉ」

「ごめんごめん」


 「寝るとすっきりするね。さっきの疲れもふっ飛んだ」

「人間の感覚は私にはよく分からないよ」

「人間……?」

「ああ、そういえばロリちゃんにはまだ言ってなかったっけ」

「何も聞いてません」


 「ノエル、元々は人間だったんだよ。私が魔法で魔族に作り変えた」

「人を魔族に作り変える魔法……そんなもの存在してるんですか?」

「私が100年くらいかけて作った」

「あなたが作ったんですか!?」

「私は魔法の研究が趣味だからね。他にもたくさん魔法作ってるんだよ」

「オリビア様ってすごい人だったんですね」


 「私の事これまでどう思ってたの?」

「人をからかうのが大好きな1322歳児」

「結構ひどいね」

「すみませんでした」

「でもちゃんと謝れたのはすごく偉いね」


 「レイチェルも起きましたし、試し斬りしに行きましょう」

「待ってましたぁ~」

「オリビアさんが1番楽しみにしてますね」

「わくわくするじゃん」

「まあ、私も何とも思わないと言ったら嘘になりますけど」

「じゃあ思いっきり暴れても被害が出ない場所に移動しよっか」

「はい」

『発動:空間魔法 テレポート』


 オリビアさんの転移によって、家の前から無限に広がっていると錯覚してしまうほどに広い草原に飛んできた。目の前の巨大な岩以外、本当に何も無い。


 「早速振ってみて」

オリビアさんがすぐ前にある大きな岩を指差しながら言う。


 私の左手に握られた使う前から血塗られたように赤黒い剣を見つめる。

血塗られたように赤黒いという表現はこの剣には少し不適切かもしれない。

宝石のように美しく、まるでこの剣が妖しい光を放っているような錯覚に陥ってしまう。

そういう表現の方が自分でも納得がいく。


 「じゃあ、いきますよ」

剣を折ってしまうと怖いので身体強化をしっかり発動し、岩に向かって剣を振り下ろす。


 まるで最初からそうなると定められていたように大岩は簡単には真っ二つに両断され、地面までも削り取った。

凄まじい切れ味だ。下手に振ってしまうと周りの全てがバラバラに切り裂かれてしまう。

扱いには気をつけようと心に誓った。


 「すごーい! ほんとにあの店行って良かったね」

「私のおかげですね」

「誉めて使わす」


 段々レイチェルがオリビアさんのノリに対応できるようになってきてる。

前よりも目に見えていい関係になっている。

私も新たな魔王として頑張らないとなあ。


 まだ魔王じゃないけど。


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