第9話 最適な武器を求めて
「用意はいいか?」
「……はい」
「いくぞ」
視認できないほどの速さで私へ向かってきた。
「うわっ」
何とか一撃ガードできた。
しかし攻撃が重い、重すぎる。
手が痺れ、体がぐらついた。
「やるな。よく今のを受け止めた」
すかさず2発目が来る。
今度は受け止めきれず、吹き飛ばされる。
「今度は嬢ちゃんの番だ。思いっきり攻撃してこい。魔法を使ってもいいぞ」
「魔法を?」
「ああ、全力でかかってこい」
「じゃあ、行きますよ」
『発動:時間魔法 加速』
常人には視認できないほどの速度で武器商人に斬りかかる。
「なるほど、加速か」
私が振るった剣がいとも簡単にガードされる。
「なっ!」
「いい攻撃だな」
攻撃が速い。
加速を使っていても回避がギリギリだ。
いや、そんなことありえるのか。
相手は人間だぞ。
鍛えて何とかなるような話じゃない。
だとしたら……この武器商人は何かしらの魔法を使っている。
動き自体はまだ魔法無しでも納得がいく範囲だ。
しかし、動体視力だ。
動体視力が明らかに人間のものではない。
剣を打ち合いながら武器商人と会話を交わす。
「あなた、動体視力が上がる魔法でも使ってるんですか?」
「分かるのか。いい観察力だ」
「どうもっ!」
「まあ、この辺りで十分だ」
そう言うと、私の剣を一瞬で弾き飛ばした。
「速っ」
「ははは。驚いたか」
加速を使った私ですら反応できずに剣を弾き飛ばされてしまった。
最上位魔法も1日で習得して、私は少し自分の力を過信していたのかもしれない。
上には上がいることを思い知らされた。
「何なんですか。あなたのその力」
「秘密だ」
「そうですか。それで、私に最適な武器は見つかったんですか?」
「ああ、嬢ちゃんはシンプルな近接戦闘を得意としているな」
「はい」
「武器が無かった今までは殴る蹴るで戦ってただろ」
「分かるんですか?」
「ああ、長年の勘ってやつだ」
「武器屋へ戻るぞ。嬢ちゃんにピッタリな武器があったはずだ」
「はい」
「終わったみたいだね」
「あの人、強い」
「さっきロリちゃんが襲いかかってたら返り討ちに遭ってそうだね」
武器商人が壁に掛かっていた1本の剣を持ってきた。
「嬢ちゃん。この剣が俺はあってると思う」
持ってきたのは刀身が赤黒い剣だった。
「高そうですね」
「ところで、嬢ちゃんはこの剣で何をするんだ? 人間の虐殺か?」
「そんなことしませんよ!?」
「はははっ。冗談だ」
「きついブラックジョークですね」
「で? 目的は何なんだ?」
武器商人に今私がしていること、これからやらなくてはならないこと全てを説明した。
「なるほどな。随分大層な目標を持ってるんだな」
「難しいかもしれませんけど、私は自分の才能を正しいことに使いたいって思ったんです。オリビアさんのおかげで」
「そうか……。分かった。持ってけ、この剣」
「どういうことですか?」
「金は要らねえって事だ。嬢ちゃんの理想は端からみればただの絵空事かもしれねえ。だが、俺には嬢ちゃんなら必ずできる。そう思ったからな」
「ありがたく貰っちゃいなよ」
「じ、じゃあ……ありがたく頂きます」
「頑張れよ。嬢ちゃん」
「はい」
その言葉を最後に、私たちは武器屋を出た。
とても疲れたが、プロが私のために選んでくれた武器を手に入れた。
これで目標にまた1歩近づけた。
まあ、あと10万歩くらい道は続いていそうだけど。
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