第7話 共食いした魔物

 「かまって、お姉ちゃん」

そういって甘えてくる金髪の少女はレイチェル。

とにかく甘えん坊だ。

だがそれが可愛くていい、魔物と戦って乾ききった心を癒してくれる。

「よしよし、レイチェルは本当に可愛い」

「えへへ~」

「ところでレイチェル、下穿いてる?」

「穿いてない」

レイチェルは服が嫌いらしく、家ではいつもシャツ1枚で過ごしている。






 「手繋いで~」

レイチェルと手を繋ぐ。

寝るときは毎日手を繋いでとお願いしてくる。

「明日はレイチェルも一緒に魔物捕まえに行く?」

「行く~」

「おやすみ」

「おやすみ~」






 次の日の朝、魔物を狩りに行く準備をする。昨日は留守番させていたレイチェルも一緒に。

「外ではちゃんと服着るんだよ」

「はーい、オリビア様」




 「今日はまだ魔物いるところ見つけられてないから適当に飛ぼうかな」

3人で手を繋ぐ。

『発動:空間魔法 テレポート』


 遺跡のようなものが近くにある場所に転移した。

「こういうところなら何か魔物がいるかもね」

魔力感知で辺りを探る。

遺跡の外には魔物はいないようだ。

「何もいないね。遺跡に入ってみようか」



 遺跡の中に入る。

中に大量の魔力の反応があった。

それぞれの魔力が動いている。

おそらく魔物だろう。

その中に1つ一際大きな魔力の反応がある。

「1つ大きな反応がありますね」

「おそらく共食いを繰り返して力を増した魔物だと思うよ」

「共食いした魔物?」

「お姉ちゃん知らないの? 共食いした魔物は普通の魔物の比にならないほど強いんだよ」

「ロリちゃんの言う通りだよ、この2日で戦った魔物じゃ足元にも及ばないだろうね」

「私のことロリちゃんって呼ぶのやめてください。まだ成長期が来てないだけです」

「やめな~い、あなた私との戦闘訓練で負けたじゃ~ん」

「むう……」

「それより早く奥へ行きましょう」




 道中の魔物を狩りながら遺跡の最深部へと向かう。

だんだんと巨大な魔力へ近づいていく。

果たしてどんな魔物なんだろう。



 「これで普通の魔物は全部ですね」

「うん、それじゃ最後の共食いした魔物も狩りに行こっか、あれが手に入ればいい戦力になる。ちなみにさっきは詳しく言わなかったけど魔物の共食いっていうのは魔物が魔物を食べるって言うよりは吸収するって感じかな、魔族と違ってそれを自分の糧にしてる」



 最深部の扉へとたどり着く。

扉の先から強い魔力を感じる。

「それじゃ開けるよ?2人とも覚悟はいい?」

「はい」

「はい」


 私たちが答えるとオリビアさんが扉を開ける。


 その先にいたのは目や口がたくさんついた肉の塊のような魔物だった。

こちらに気づくと形を自由に変え、襲いかかってくる。

『発動:闇属性魔法 シャドウブラスト』

『発動:闇属性魔法 シャドウブラスト』

『発動:光属性魔法 ライトニングレイ』


 3人で同時に攻撃魔法を放つ。

それぞれの魔法が魔物の体を貫く、しかしすぐに再生してしまった。

「おおーすごい再生力、これはちょっと面倒だね。体の形も自由に変えられるみたいだから近づき過ぎないようにね」


 今度は魔物が触手を伸ばし攻撃してくる。

扉どころか壁までもを破壊する威力、食らえばかなりのダメージになりそうだ。


 「はあっ!」

レイチェルが触手をナイフで切断する。

しかしすぐ次の触手が襲ってくる。

「これきりがないよお姉ちゃん」

「大丈夫、私に任せて」

『発動:火属性最上位魔法 インフェルノ』


 魔物に向かって青い炎を放つ。

圧倒的熱量に魔物はけたたましい叫び声をあげて触手を振り回す。

それによって発生する風に炎が消されてしまった。


 「最上位魔法なのに効き目が薄いよー、どうするのお姉ちゃん」

「レイチェルは触手を防いで、私とオリビアさんで魔法をぶつけるから」

『発動:空間魔法 断裂』

『発動:火属性魔法 延焼』


 オリビアさんの魔法によって魔物の体が真っ二つになる。

私はすかさずそこに向かってジリジリと体を焼く炎を放つ。

魔物は炎に邪魔され真っ二つになった体を再生できないでいる。

『発動:自然属性魔法 魔法樹』


 レイチェルが自然魔法で魔物を拘束する。

「今だよ、お姉ちゃん」

 魔物の方へと近づいていく。

新しく生えてくる触手はレイチェルの魔法が何とかしてくれている。


 魔物の真っ二つになった体が再生し始めている。

急がなくては。

魔物に手で触れる。

触手が私の体に纏わりついてくるが関係ない、魔物を吸収していく。


 吸収が完了した。

「やっと終わったね。ロリちゃんもよく頑張った」

「……」

褒められたのとロリちゃんと呼ばれたので複雑な気持ちになっているのだろう。


 「疲れたし今日は帰りませんか?」

「お姉ちゃんがそう言うなら」

「休憩するのは大事だからね。また明日からがんばろ」







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