第5話 実戦訓練

 今日は魔物との実戦だ。

「これから魔物がいるところに行くよ」


 いよいよだ、魔物に負けることは無くても勢い余って殺してしまわないように気をつけなければならない。

『発動:空間魔法 テレポート』


 森が近くにある平原に出てきたその瞬間、魔力感知に何かが引っ掛かった。

「魔力感知で何かを感じました。これが魔物ですか?」

「ノエルの魔力感知もいい感じにはたらいてるね。その通りだよ」


 魔力の元へ視線を向ける。

そこには四足歩行で体のいたるところに口がついた魔物がいた。

「……化け物」

「ちょっと刺激の強い見た目してるね。まずはこいつと戦ってみよっか」

「はい」


 魔力を全身に巡らせ身体強化を行う。

全身から魔力の光が放たれる。

準備は完了だ、あとは殺さないように魔物を弱らせるだけ。

『発動:闇属性魔法 シャドウブラスト』

漆黒の光線に体を貫かれた魔物は身体中の口から叫び声をあげ、こちらへ飛びかかってくる。

『発動:時間魔法 加速』


 自分に時間魔法の加速を付与する。

世界がゆっくり動いているように感じる。

即座に魔物の後ろに回り込み加速によって勢いが乗りさらに強烈になったパンチを1発。

「はああぁぁぁぁ」

衝撃で魔物が吹き飛ばされ動かなくなった。弱らせることに成功したようだ。


 「いいね、魔物が弱ってるよ。今のうちに支配しちゃおう」

動きを止めた魔物に触れる。

すると魔物が私の手に吸収されるようにして消えた。


 「こんな感じで支配できるんですね」

「自分のものになった魔物は好きなときに出し入れできるんだよ。しかも何でも命令できるから戦力にもなる。でも死んじゃうと支配から外れてまた別のどこかで新たな魔物が生まれるからそこは注意しないとね。あとあっちの森も一応見ていこうか」




 ここの森はかなり木が多く、ほとんど光が地面まで届いていない。


 魔力感知にまた何かが引っ掛かった。魔力の量からしておそらく魔物だ。


 「あの……2人……魔族……魔力は……抑えてる……?」


 魔力を感じた場所へ向かう。今回の魔物はさっきのような化け物ではなく、狼のような見た目をしていた。

身体強化をすると同時に魔法を発動する

『発動:時間魔法 加速』

魔法で攻撃すると自然を破壊してしまう。

こういう状況は拳で叩いたほうがいい。

「はあっ!」

狼のような魔物が気絶した。

起きる前に吸収しよう。


 魔物の吸収を完了した。

「よし、これで森の魔物はいなくなったかな。今の魔物、結構強い魔物だったんだけどな。すごいね」

「どうして強いとわかるんですか?」

「構えに隙が無かったからだよ。今のはノエルがスピードどパワーで瞬殺したからわからなかったと思うけどね」





 「ここは……私の……縄張り……あの2人は……排除……しないと……」



 「じゃあそろそろ帰ろっか。しっかり戦えてて感心し……え?」

オリビアさんが背後からナイフのようなもので心臓を突き刺される。

相手は……魔族? 何で魔力感知に引っ掛からなかったんだ……

「オリビアさん!」

「痛ったいなあ」

『発動:闇属性魔法 シャドウブラスト』


 オリビアさんが背後に向かって魔法で攻撃する。たがその瞬間には敵はもうそこにはいなかった。

「相手は魔族だね、相当動きが速い、魔力感知にも……引っ掛からなかった。かなり厄介……だね」

オリビアさんが吐血する。

「オリビアさん!」

「魔族はこれくらいじゃ死なないよ、それよりさっきの敵だ。逃げる? それとも戦う?」


 この時なぜか私には、絶対に勝てるという自信があった。

「私なら何とかできると思います」

『発動:時間魔法 加速』

相手が速くても私が加速を使えば追いつけるはず。


 敵が急に動きを変え、こちらに切りかかってくる。

しかし躱すことができた。

やはり加速で追いつけている。

相手がこのスピードじゃ魔法は当てられなさそうだ。

やはり今回も拳でやるしかないのだろうか。


 拳から炎を出して殴ればもっと威力が上がるのではないだろうか。

『発動:火属性最上位魔法 インフェルノ』


 こんどはこっちの番だ。

「ていやあぁぁぁ!」


 敵の腹部にクリーンヒットした。

と思った瞬間、拳が敵の体をすり抜けた。

「え?」

私は困惑し、攻撃がすり抜けた理由の解明に脳が集中してしまい攻撃に反応が一瞬遅れた。


 咄嗟に体をねじって躱そうとするが避けきれず太ももにナイフが突き刺さってしまった。

「あああああああああああぁっ」

痛みに耐えきれず叫び声が漏れる。落ち着け私は時間魔法が使える。

『発動:時間魔法 遡行』

自分の体を巻き戻し、傷口を塞ぐ。


 こいつ傷を瞬時に治した。

突然動きが速くなったことも考えればおそらく時間魔法なのだろう。

一気に仕留めないと回復される。

実際の魔力量もよくわからない、魔力切れを狙うのは悪手か?

『発動:光属性魔法 閃光』


 突然暗い森で強力な光が放たれる。

目が開けられない、こいつは光属性魔法が使えるのか。

おそらくさっき攻撃がすり抜けたのは幻覚を攻撃していたからだろう。

光属性魔法は光を操作し、相手に幻覚を見せる魔法があるとオリビアさんが言っていた。


 やるしかない、最終手段を使うしかない。

私はそれほどに追い詰められている。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る