第3話 魔法の訓練

 「うんっ、あぁーーーおはようノエル」

「おはようございます」

ベッドから出て近くに置いてある服に着替える。


 「あなたの服は昨日のうちに準備してあるからそれに着替えてね」

「服まで準備してくれてたんですね。ありがとうございます」

「顔洗って目覚ましたらこれからのことについて話しよっか」

「了解です」


 服を着替え、階段を降り1階の洗面所に向かう。

目覚めたばかりだが全く尿意を感じない。

トイレに行く必要も無いようだ。

魔族の体には老廃物というものは存在しないのだろう。

とても便利な体だ。


 洗面所で顔を洗う。

水の冷たさが私の意識を覚醒させる。


 目を覚ましてリビングへと向かう。

「それじゃこれからのことについて話していくね」


 「まず最終目標はこの世界のすべての魔物を支配して人間と和解すること」

「魔物を支配するってどうするんですか?」

「魔族には魔物を支配できる力があるんだよ。支配する魔族側の力が魔物よりすごく強いと無条件に支配できるんだけど力の差が一定以下だと弱らせないと支配できないんだよね。でも弱らせようとしてやりすぎると消えちゃうから要注意だね」


 「魔物が際限なく現れるこの世界ですべての魔物を支配するのは不可能では?」

「この世界に存在する魔物の数は常に一定なんだよ。世界のどこかで魔物が死ねば別のどこかで新たな魔物が生まれる。突然魔物が現れて人が襲われるのはそれが理由なんだよ」

「つまり殺すのではなく支配して悪循環を終わらせるんですね」

「そういうこと」


 「でも魔族は基本排他的な傾向にあるのでは?」

「それはね、魔族の世界は実力主義。強いやつが上に立つ、だからあなたが強くなって排他的な考え方の魔族をみんな従わせるんだよ」

「果てしなく遠い道のりですね」

「魔族は長生きだからゆっくりでも大丈夫。今話さなきゃいけないことはこれくらいかな。そろそろ街を見に行くとしますかな」

「はい」

「この家街からちょっと離れてるから3分ほど歩くよ」


 森の中の道を2人で歩く。

もう存在しない両親と歩いているような感じがする。

これから先うっかりオリビアさんをお母さんと呼ばないように気をつけないと……

「ここだよ、ちょっとまわっていこうね」

街並みは人間の街とほとんど変わらないらしい。




 町を一通り見終わったあとオリビアさんの家に戻る。

「それじゃ、そろそろ特訓始めよっか」

「はい、お願いします」


 「まずは魔力を全身に流して身体機能を引き上げる身体強化からね。自分の魂に溢れる魔力に触れるイメージをしてみて、魔法はイメージが大事だからね」


 自分の魂の内に溢れる魔力へと手で触れるイメージをする。

感じる、まるで底なし沼に手を突っ込んだような感覚を。


 「できました」

「いいね、じゃあ次はそこから魔力を引っ張り出して全身へ送り出すイメージで」


 底なし沼に突っ込んだ手で魔力をすくいだす。

その魔力を体の中心から全身へと流した。

全身から魔力の光が溢れ出す。


 「おお~すごいね、もうできちゃった。それじゃ身体強化の出力が度の程度か調べてみようかな」


 そういうとオリビアさんは魔法を発動する。

『発動:無属性魔法 障壁』

オリビアさんと私の間に魔力の障壁が構築される。

「ここに思いっきりパンチしてみて」

「はい、やってみます。……すぅー……はあぁぁぁぁ!」


 衝撃に耐えきれず障壁が粉々に砕け散る。

さらにその衝撃波に押されオリビアさんも吹き飛ばされる。

魔族になってから元々の身体能力が強化されているとはいえとてつもない力だ。

「痛っててて……結構全力で防御したんだけどな、すごいねノエルの身体強化は」

「そうですか、ありがとうございます」


 「じゃあ次は魔法の属性の適正を調べようか。魔力は人によって性質が違う、だからそれぞれ使える属性が違ってくる」

オリビアさんが魔方陣が刻印されたメダルの様なものを何枚か持ってきた。

「このメダルはそれぞれの属性の魔方陣が刻まれてる。ここに魔力を流して事象が発生すればその属性に適正があるってことになる」

順番にメダルに魔力を流していく。


 すべてのメダルに魔力を流し終える。

「うんうん、ノエルは時、火、闇属性の魔法に適正があるみたいだ」

「それじゃあ次は火属性魔法から練習していこうか。無属性魔法は誰でも使えるから後回しでいいかな」

「はい」













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る